M&A月報No.94 「タクシン首相再選と新閣僚の発表」

3月9日、タイの下院は、先の総選挙で圧勝した(500議席中377議席を確保)、
タイ愛国党の党首タクシン氏を首相に再選した。
任期は2009年までの4年間となる。

目下の懸案事項は津波被害よりの復興、南部の治安対策、日本との
FTA締結等である。

また国益に関わる緊急且つ重要事項については、首相と担当閣僚の2名で
閣議決定となる事も決議された。
野党よりは当然の事ながら首相に権力が集中し過ぎるとの批判も出ている。

正式に任命後、首相は周囲を驚かせる演説をした。
即ち、『今後は心を大きく開き、反対する者の言い分に耳を傾け、マスコミの
関係者とも良く話し合い、人権を尊重し、NGOを支援し、国民に権力を戻す』
と言う趣旨であった。

過去の4年間は上記をやっていなかったという自己反省であろうか。
彼の性格を知る人々には信じがたい演説であった。

また、
『人々が良い生活を送れる様に、良い社会になる様に、良い教育が得ら
れる様に、そして経済が良くなる様に手助けをして行く。そして、今回、
自分に与えられた多数の支持を、自己の権力のために使うのでは無く、
愛を持って、タイ国民が仲良く暮らせる様な世の中にして行くために
使っていく』

とも言及した。

また、2008年に予備選挙を実施する事も公約した。
何が首相を変身させたのであろうか。
上記の公約通りやって呉れればタイの近未来は明るい。
でも有識者が彼の発言を信じていない所が問題である。
今後の発言、舵取りに注目したい。

タクシン首相は新閣僚の発表を行い、内閣の改造を実施した。
バンコック市民の66%が新閣僚に満足しているとの世論調査の結果も
発表されたが、35ポスト中、24ポストが首相派や首相夫人に近い人々、
並びに妹のヤオパ派が占めた事に懸念を感じる。
タイの経済界は、ほぼ満足のコメントを出したが、工業相に起用された
元商業相のワタナ氏については、経験不足との懸念を表明した。

タクシン首相以下35名の閣僚は国王の訓示を聞くべく、ホアヒンに赴いた。
国王よりは誠意と誠実を持って国政に取り組む事、また各人の公約を
守れとお言葉を賜った。

また国王はこの3点、即ち誠意、誠実、公約を守ればタイ国は益々栄えるし、
自分は素晴らしい閣僚を持った事を誇りに思うだろうと励ましのお言葉も
述べられた。言葉を替えれば、国王はこの3点が守られていないとお思い
なのではないかと思われる。

新閣僚による国会が開催されたが、初日より5日間タクシン首相は異例の
欠席となった。理由は娘の学校の休みが今だけなので、家族、娘を連れ
日本に休暇を楽しみに行くというのである。
どうも言う事とやる事がちぐはぐである様な気がしてならない。

全国的な旱魃の被害が大きく取り上げられる様になって来た。
被害を受けている農民は63万世帯と言われており、40億バーツの
融資も決定された。
降雨を促進する対応策も検討されている。
早く雨季が始まる事を念じたい。

またまた大型の地震がスマトラ島沖で発生した。
死者が1,000人を越えるとの報道もある。お気の毒としか言いようが無い。

バンコクに住む我々は殆ど体感しなかったが、高層マンションの上の方に
住んでいる人は感じたとの事、今まで地震とは無縁と言われていたのに
不気味な思いがする。
全く地震の事は考えずに建てている高層マンション、バブルの懸念に
加えて地震も心配になって来た。
今回は津波が発生しなかったのが観光業には幸いと思われる。

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