「足るを知る経済( Sufficiency Economy )」哲学というものがあります。
王室プロジェクトの目的は、人間の自立のための開発であると言えますが、
プミポン前国王陛下のプロジェクトにおける重要な原則の一つは、
開発は地理的・社会的条件に合わせて行われなければならないということです。

この開発には、現代技術と知識の適切な発展が求められるのみではなく、
持続性の原則と天然資源の開発に基づいて行われなければなりません。
プミポン前国王陛下の理論では、限られた天然資源の適切な管理のための
指針が提案されておりますが、ここで一例をご紹介いたします。 

タイの農民世帯は約4~5人から成り、約15ライ( 2万4千㎡)の土地を
所有していますが、プミポン前国王陛下の理論では、この土地を4つに分け、
その3割(その内の一区画)は乾季の耕作時に使用する水源とすると同時に
魚を飼育するための池を掘り、残りの内3割は一家が一年に消費する米を
耕作するための土地とし、さらに 3割を integrated field(集積地)
として園芸作物及び果物の栽培に当て、残りの1割を住居及び家畜飼育や
きのこ栽培、道路として利用する提案をされてこられました。

国の開発において、プミポン前国王陛下は各地で利用できる天然資源を
利用するという自然の原理に従ってきておられます。ベチベルソウにより土の
腐食を防ぐと同時に土と水を節約することができた例、自然農法のために
悪化した土地の改良を行った例、植林なしで森林再生を行った例、
水源を守るために森林内に砂防ダムを建設した例、 ホテイアオイを
腐敗水の問題解決に利用した例等、これまでに非常に大きな成果を
上げて来られました。これらのプロジェクトにおけるシンプルな過程は、
生態学的システムにおける均衡をもたらし、その結果、持続可能な
開発につながっています。
そして、これら全ての業績が「大地の力・強さ」を意味する「プミポン」という
前国王陛下のお名前に集約されています。

プミポン前国王陛下が大災害時の慈善事業にも力を注いでこられたことも
有名な御話です。注目を集めた例としては、1962年に台風が南タイの
沿岸地域12県を直撃し、多くの被害を出した災害における事業があります。
プミポン前国王陛下が、速やかに王室ラジオ局を通して、全国に向けて
被災者援助の要請を行われた結果、援助活動のための寄付金が十分に
集まり、そしてその余剰金で自然災害の被災者支援を行うための
ラーチャプラチャーヌクロ財団の設立に至っています。

プミポン前国王陛下が推進、指導された「王室プロジェクト」もご紹介します。
プミポン前国王陛下は、その住居である“ドゥシット宮殿ジットラダー・ビラ”に
おいて、農業、林業及び小規模工業等のジラダープロジェクトを実施なされ、
この宮殿の敷地内には、水田、野菜畑、果樹園、家畜場、魚の池、
精米所、酪農場等があります。また、これらのプロジェクトの成果は一般に
公表されており、人々や組織はその成果を利用することができます。
1952年よりこれまでに3,000を超える王室プロジェクトが実施されており、
国家への貢献は計り知れません。

自給自足ができる国。
水、土、太陽に恵まれた国。
農業回帰、そして、さらなる農業技術の発展への動きも高まっています。