タイに進出していきなり1年目から利益を出せるスーパーカンパニーというのは少数です。多くの会社は市場の開拓やサプライヤーとの信頼構築、従業員の育成などに時間を要し黒字に転換するのは3~5年目以降が一般的です。

しかしながら利益を出せない間も、オフィス/工場の家賃や給与といった固定費は必ず発生し、資金繰りの問題が発生します。その場合、借入または増資の2つの資金調達方法がありますが、株主総会や増資登記が必要な増資に比べて手続きが容易な借入のほうが優先順位は高いのではないでしょうか。

タイ現地の金融機関からの借入は不可能ではないものの、信用の問題から利率の面を含めていい条件で借入は難しいです。そのため、多くの場合、親会社から親子ローンという形で資金を調達するのが一般的です。(設立間もない、赤字、担保なしの条件でお金を貸してくれるのは親会社くらいです)

親子間なので契約書なんて必要ないと思う人も多いですが、監査や税務調査ではほぼ確実に提出を求められますし、そもそもタイの銀行に借入金が入金されても契約書がないと銀行がお金をリリースしてくれないという悲惨な事も起こります。(恐らくマネーロンダリング防止のため)

契約書は弁護士事務所などに依頼すれば安心ですが、A4 1枚に収まる内容で数万バーツの費用がかかる事もあります。

となると、自社で作成となりますが以下は最低限抑えておきたい事項です。

1.借入額

当たり前ですがいくら借りるかです。ここで大事なのがバーツ建てなのかそれとも円などの外貨建てかです。

外貨建ての場合、期末の残高は洗替え(評価替え)という作業が必要になります。ローンの開始日と期末の為替レートの差が為替差損益としてPLにのりますが、益が出た場合は法人税課税対象です。ただお金を借りただけで税金が発生するというかなりばかばかしいケースも発生します。逆に損が出た場合では、場合によっては営業利益を全て吹き飛ばしてしまい、PL上見栄えが悪くなったりもします。(節税にはなりますが)

2.利率

利子をいくらに設定すればいいのかというのはよく頂く質問です。あまり高くしても低くしても、タイ及び日本側で移転価格の問題が発生します。

貸手になる日本側では、国税庁による「移転価格事務運営指針3-7」にて以下のように定められています。

【子会社からもらうべき利率】

1)  タイ子会社が現地で金融機関から借入れる際に想定される利率

2) 1)が不明の場合、日本本社が日本で金融機関から借り入れる際に想定される利率

3) 2)もわかなない場合、国債の利率

(3の理屈でいくとマイナス金利でもいいのか!?となりますがお勧めしません。ちなみに2018年9月14日の1年ものの国債の利率は‐0.119%です)

 

3.期間

借入れの期間ですが、親子間で延長や早期返済はかなり融通が利く事になりますので、あくまで形式的に設定しておけばいいと思います。

4.税金

タイ日租税条約により、タイから日本への利息の支払いには15%の源泉税の対象となります。(金融期間の場合10%)

利息の支払いから源泉税を差引くのか、それとも源泉税はタイ子会社の負担とし、本社は利息を満額で受取るようにするかは契約書中に明記すべき事項です。

タイで差引かれた源泉税は日本で外国税額控除の対象になります。日本で払うべき法人税より控除可能となるので、タイで税金を払い捨てとならないように注意が必要です。

 

印紙税も注意が必要です。

金銭消費貸借契約書は借入額の0.05%(ただし上限1万バーツ)の印紙税の対象となります。

通常は貸手(つまり日本側)が負担するのが一般的ですが、タイにおける税務調査にてタイ側でも添付するよう指導を受けた例が多々あります。

また、2015年4月以降は印紙を契約書に貼り付ける形ではなく、税務署にて現金で支払いという方法に変更となっています。納付の際、オリジナルの契約書が求められます。

 

上記以外でも、契約不履行の場合の罰則やどちらの国の法律に準ずるなどの項目はよく見かけますが、親子間の話のためそれほど重要ではないかもしれません。

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