微笑みの国で雨にウタレテ・・・90′s 其ノ四

フムムのナリタヒデキとの初のタイ旅行は、雨季ゆえの連日のジメジメ雨に、
そしてその高温多湿な気候に喉をカラカラ渇かしながらも、連日のように
バンコクの中を歩き回っていた。
 
特に目的もない訳だから、毎日々々観光スポットに行くだけのことなのだが、
とにかくガイドブックたるものを持って異国人の中を自由に歩き回るのは
とても新鮮で気持ちがよかった。
夜は、どっかの道端の屋台かなんかでバーミー(麺)やカオパット(炒飯)を
喰い散らかしながら、ピリッとくるシンハビールを飲むのである。

やがてこれが一日の唯一の楽しみにもなり、夜に妙に生温い道端で、
通り過ぎる車やバイクの騒音を聞きつつ、人の流れをなんとなく見ながら
ビールを飲んでたわいもない事をしゃべり続けるといった、只それだけの
ことだけで、喧騒の中の日々は過ぎていき、そしてそれが妙に心地良かった
のは、日本の殺伐とした堅苦しい環境から一時的にでも、距離的・精神的に
離れることが出来たことに対する純粋な心の表われだったのだろう。

 
とにかく、朝、眼が覚めると雨が降っていることが多かった。
雨の音が大きいもんだから、街の音は聞えてこない。だけどファン(扇風機)
だけはやけにカタカタと音を鳴らしてはその存在をアピールしているような
感じだった。

1階がレストランになっている宿の4階泊まっていた俺達は、適当な時間に起きて
3階にある狭いシャワー兼トイレ室でシャワーを浴び、ノソノソと1階の降り、
マスターにコーヒーとパンをとりあえず頼み、タバコを吸い終えると、ノソノソと
今日の予定を立てるのである。
 
ナリタヒデキは、とにかく節約系の男だったから、時間よりもルートよりも、まず
それに掛かるコストを気にする男であった。
また、楽な旅をしていくことを頑なに拒んでおり、かたや一方で、元来なまけモノで
楽を好み、たいして変わらない金額であるならば、移動なら早くて楽な方、
宿であればキレイで広くて疲れない・・リラックスできる方を選ぶタイプである
俺に対して、常に憤慨し呆れモードになっている奴であった。

「フムム・・・そんなんじゃ、旅のおもしろみがないじゃないかぁ、、ふむむ」

が口癖であり、

「じゃ~僕は市バスのこのルートで行くから、おまえは自分の行きたい
 方法で行けばいいじゃないかぁ」

と、その当時、俺が一人で行動することが果てしなく不安だったのを知って
いるかの如く突き放すのである。
「ナンダヨ、それ!」と僅かばかり抵抗する俺であった。

その当時は1バーツ=約5円だったから、例えば、一泊250バーツの宿ならば
約1,250円(今のレートで考えると750円)。
まぁ、安いとは言えない額ではあるが、 日本に比べると安いという感覚はあったし、


「そんな無理して一泊50バーツの宿に泊まって疲れを溜めることもなかろうに・・・
そんなだけ節約したって・・・」

というのが俺の考えであり、やたらむやみに「節約々々貧乏々々旅行・・・」を
推進するナリタヒデキとの確執がだんだんと浮上してきては、事ある度ごとに
「結果的には負けいくさ」を挑んだものだった。



(つづく..)

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