M&A月報 No.246「プラユット首相の新たな質問」

プラユット首相が、再度国民に対し、新たな6つの質問を投げ掛けた。

前回の質問は4つで、内容は下記であった。

1.選挙を行って本当に良い政府が誕生するであろうか?

2.良い政府が誕生しなかったらどうすれば良いと思うか?

3.選挙は民主主義の原点だが国の将来を考えずに行うべきか?

4.過去に不適切な行為のあった政治家を出馬させても良いか?

前回、現職の首相がテレビを通じて、国民にこの様な質問を投げかけた事例は世界に無かったし、大きな波紋が投げかけられた。

賛否両論もあり、野党の党首よりは非難の声が上がったりしたが、首相は“政治家には聞いていない。国民に聞いている”と一蹴したのを覚えている。結果、約100 万人が回答したが、回答の集計結果はいまだ公表はされていない。

一方、今回の質問内容は下記である。

1.  我々は次期総選挙において新政党、新たな政治家が必要か。既存政党、既存の政治家には改革、国家戦略を進めることは無理なのか

2.  国家平和秩序評議会(NCPO)に政党を支援する権利はあるか

3.  政府の過去3年の功績で将来の見通しは明るくなったか

4.  現在の政府を過去の民選の政府と比較することは適切か

5.  過去の政権は効率性、良質な統治、長期開発への貢献を示したか

6.  政党と政治家はなぜこの時期に政府を批判するのか

NCPOが政党を立ち上げるとの臆測が流れる中、首相が政党や選挙に関する質問を行ったことは、何らかの意図があるものとみられている。

今回の質問に対し、ある大学が独自に調査を行い、下記回答を発表している。

1.41.3%が「必要」と回答。「既存政党が優れ、汚職がない場合は必要ない」と回答したのは14.8%にとどまる

2.「NCPOは中立な立場にいるべき」が34.9%で、「NCPOはいかなる政党も支持できる」は31.9%であった

3.「ペースは遅いが明るくなっている」が31.0%で最多

4.「状況が違うため、比較できない」が53.8%で最多

5.「示さなかった」が64.3%で、「示した」の17.8%を大きく引き離す

6.「彼らの権力と利権を維持するため」が30.1%で最多。「政治家が不公平な待遇を受けているため」が26.6%、「政府が無能であるため」が20.7%と続く

国民の約4割が新政党、新たな政治家を必要としているとの結果であった。

来年には総選挙が行われる予定であるが、おそらく連立となり、首相はプラユット現首相が継続との見方が強いのではないだろうか。

そのプラユット首相が内閣改造を行った。今回は、18 の閣僚ポストを入れ替える人事である。軍・警察関係者は12 人で、昨年末の改造時から2人減少した。民間団体からは「新閣僚はインフラ整備や重要法案の早期成立に向けた努力など目先の重要事案を選別して取り組む必要がある」、「それぞれの専門家が集まった印象だ」と民間団体からはおおむね期待を伴う肯定的な声が上がっている。

現政権の目玉政策の一つ、ECC(東部経済回廊)であるが、来年に開始予定のインフラ事業が計103 件、総額7,450 億バーツ(約2兆5,500 億円)

に上る計画であると発表された。ちなみに、2018年度(2017年10月―2018年9月)の国家予算は2兆9,000億バーツである。

主要な事業は、レムチャバン港とウタパオ空港を接続する道路の改修、マプタプット港の拡張、EECの3県(チョンブリ、ラヨーン、チャチュンサオ)を結ぶ高速道路の開発、ウタパオ空港の拡張などであり、大半が向こう5年以内に完成する計画とのことである。

ウタパオ空港の拡張計画では、2021 年までに旅客収容能力を現行の年間300 万人から1,500 万人に引き上げ、さらに向こう20 年間で6,000 万人に拡大する目標である。すでに、カタール航空が、来年1月28 日に同空港とカタールの首都ドーハを結ぶ直行便の運航を開始することが決まっている。

また、同空港で開発予定の航空機の整備・修理・分解点検センターは、タイ航空とエアバスが合弁事業の契約を交わす見通しであり、またボーイング社は、EEC(ウタパオ空港)での航空訓練施設の設置に向け、目下事務局と交渉中である。EEC内であれば、航空機の整備・修理事業は外資形態での遂行が認められている。

タイは農業国ではあったが、自動車をはじめ工業化が進み、さらなる進化を遂げようとしている。その中心がEECであり、さらなる高度産業化を推し進め、やがて政治的にも経済的にも地政学的にも確固たるアセアンの中心となるべく、国が一体となっていかなければいけない時期である。

そこにひょっとしたら、10年前から抱える問題である国家分断解消(和解)への解決の糸口があるのかもしれない。

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