M&A月報 No.176号 インラック政権一年の評価と2013年度予算案可決

日本よりは、寝不足となるとのコメントが多く飛び込んで来るが、
タイ当地でも、ロンドンオリンピックの観戦が、時差の関係で
15:00~真夜中となるため、辛い朝が続いた。

過去は、放送権の関係で、重量挙げ、ボクシング、バトミントン等、
ほんの限られた、タイ選手が活躍するもののみが当地でも観戦出来たが、
今年は様変わりで、陸上競技、水泳、テニスをはじめ数多くの名勝負を
見る事が出来た。

残念ながらタイのメダル獲得は少なく、男子ボクシングの銀と
女子重量挙げの銀、女子テコンドの銅の3個のみであった。
因みに、銀メダルには報奨金として数千万円程度が支給されるようである。

インラック政権が誕生してから一年が経過した。
当初は兄タクシン氏の操り人形と揶揄されたが、その端正な美貌で、
総選挙において勝利を収め、インラック旋風を巻き起こした。

しかし、国会の答弁では、数字を読み間違えたり、固有名詞を間違えたりして
物議を醸し、読む本は女性雑誌のみ、喋らぬ事が何よりも重要と言われたが、
次第に落ち着き、間違いも少なくなり、海外よりの要人とも無難に対応し、
外交でもその容姿端麗を武器に、何とか無事に過ごした一年と感じている。

不幸にも、10月に大洪水に見舞われ、過去の経験も無く、その対応に
大いなる非難を受けたが、女性の涙とは恐ろしいもので、その涙する姿で
何とか難局を乗り切った。

与党になり、取り巻き連中は何とか総帥のタクシン氏の帰国を実現しようと
やっきとなり、司法、世論を敵に回しても、憲法まで改正しようと画策したが、
この間、インラック首相は何も情報を発信せず、沈黙を守った事を
評価したいとも思う。

さしたる成果が無かったとも批判されているが、彼女の運もあるのか、
目下は日本よりの進出、拡張が絶好調で、日本民主党の大失策の数々のお蔭で、
失業率も0%となり、何もする必要性が無いと言った所ではないかと思う。
最低賃金を公約通り300バーツに上げた事も影響してか、物価の上昇が
目立って来ている。
世論調査でも、改善すべき点の87%が物価高への対応と答えている。
首相の見た目の良さと、頑張っている様子が評価されているが、
今後は首相の取り巻きより、ひつこく出てくる兄の帰国問題に、
どの様なリーダーシップを発揮するのかという点に注目が集まっている。

米国の雑誌、フォーブスが選ぶ、世界で最もパワフルな女性100人中、
インラック氏が第30位に選ばれた。
ちなみに、1位は独のメルケル首相、2位が米のクリントン国務長官、
19位にはスー・チーさんが入ったが、残念ながら日本人女性はゼロであった。

日本で政局となっている消費税であるが、タイでは既に10%が決定している。
しかしながら、景気の低迷が懸念されるとして、目下は暫定税率の
7%が適用されている。

この時期が来月には切れる事に際し、タイ政府は、未だに昨年の洪水被害の
影響が懸念されているとして、この暫定税率7%をさらに2年間延長する事を
決定した。

タイ以上に経済が低迷していると感じられる日本で、首相が生命を賭けて
税率の引き上げ法案を可決した事に、違和感を感じている。
景気に悪影響を及ぼすと言われる消費税を上げる前に、首相が生命を賭ける事は、
歳出の削減ではないかと海外より物申したい。

ラトビアが見習うべき成功例とも言われているが、まずやった事は、
公務員の30%削減と、その給与を25%引き下げた事である事を
学んで欲しいものである。

2013年度の予算案が下院で可決された。
歳出は2兆4,000億バーツ(約6兆円)で対前年度では約20%の増加となっている。

政府は治水事業費の増加等で止む終えないと説明しているが、
一方では法人税を30%から23%に引き下げた事もあり、何としても税収の
増加を図らねばならず、国税、関税当局にかなりの圧力が掛かる事は容易に推測でき、
進出している日系企業群は、社内体制の強化に注力し、対当局に対する
万全の体制を敷くことが強く求められる時代になったと考える。

不当な言いがかりに対して毅然とした態度で臨み、的確な論陣がはれる体制作りが
各社に求められていくと思う。

絶好調のタイ経済を反映してか、最低賃金の上昇で、一般的に給与が上昇した為か、
新車の売り上げが絶好調で、昨年比50%アップの120万台が今年は販売されると
予測されている。

おかげで、有名な交通渋滞は益々酷くなり、都心では、深刻な駐車場不足が叫ばれている。
面白い事に都心では、紙のナンバープレート付けて走っている車を見かける様になった。
これは仮ナンバーで取り付ける赤色のナンバープレートが不足し、需要に供給が
間に合わぬ現象で、さらには、本ナンバーの白のナンバープレートも数が足らなくなり、

従来、タイ文字2つに、数字4桁であったものに、その間に更に一桁増やす事が決定した。
好景気に沸く嬉しい話ではあるが、交通渋滞/駐車場不足を考えると、
喜んでばかりでは居られない状態となって来た。
タイ政府は更なる道路網の整備、拡大に取り組んで欲しいと願っている。

尖閣諸島、竹島等、日本では領土問題が日々大きく取り上げられているが、
思い出すのは、フォークランド紛争時に取ったサッチャー首相の断固たる決断の姿である。
賛否はともかく、彼女の様な政治家が、今は存在しない事を残念に感じている。

しかし、この問題は、今の日本に取って良い教材に成っている様な気もする。
自力で解決する能力も手段も持たぬ日本は、海外より見ていると、
やはり米国頼りなのかと感じてしまう。

本腰を入れて、米国がこの問題で日本を擁護してくれる力も気もない様に
感じるのであるが、如何なのであろうか。
今この問題で日本と歩調を合わせて戦ってくれる国は、アセアンにこそ
存在すると従来より思っているが、日本の目は全くその方向には向いていない。
アセアン諸国はなぜ連合しようとするのであろうか。
それは中国に呑み込まれない為であると思っている。

中国とは喧嘩はしたくないが、その支配下には入りたくないと要人は言う。
この点では、日本はかなり彼等と共有出来る部分があると思っている。
いじめに遭って居るのに、親友は無く、先生等は傍観するのみで、
金持ちの坊やの悲哀を見ている様な気がしてならない。

今、日本にとって必要なのは、共に戦ってくれる親友ではなかろうか。
その国はどこであると日本政府は考えているのであろうか。

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