M&A月報 No.170号 「2011年タイ10大ニュース」

12月5日、国王の誕生日をお祝いする式典が盛大に執り行われた。
今年は7巡目の84歳で特別な年でもある。
未だに水が残っている地域もあり、開催を懸念する声も一部には
あったが、挙行された事を嬉しく感じている。
車椅子に乗ってのご登場ではあったが、国王が民衆の前に、
皇族方共々と、お元気なお姿をお見せ下さった事に、
人々は安堵と感激を感じていた事と思う。
インラック首相が、非常に緊張した面持ちで、ご祝辞を読み上げた姿が
印象に残ったが、関係者一同、何とか無事に読み間違いが無い事を
念じていた緊張感が周囲より伝わって来た。
何故なら、新聞報道であるが、インラック首相が、自身のフェイスブックに
国王の誕生記念式典に国民の参加を求めるメッセージを書き込んだ際に、
国王と間違え、国王の兄上の写真を(ラマ8世)掲載していた事が
発覚したためでもあった。
 
過去、国王は国民に語り掛けられたが、今年は、原稿をお読みになった。
“人々は協力し、何事よりも優先し、洪水被害よりの復興に取り組んで欲しいし、
将来二度と今回のような、甚大な被害が及ばぬよう、治水の改善に注力して欲しい。
これは国民の幸せにも繋がるし、国の安定にも貢献する。
式典では、政府要人や軍隊の幹部が多く集まって祝ってくれたが、
国民が良い生活を送れ、幸福で、不幸せで無い事が、
最も国が安定する事である事を肝に銘じて欲しい。
それには全ての人々が手を携え協力し合える環境を作る事である。
目下、多くの人々が洪水の被害に喘いでいる。
従来より述べている、王室プロジェクトでもある、治水事業に早急に着手し、
二度と斯かる洪水被害を出さぬ様万全を期して欲しい“
 
政治家や軍隊幹部が権力争いに終始し、ご自分が予てより懸念を示し、
改善策を提示している治水事業が停滞してしまっている事への、
ご不満のご表明とも受け取れた。
 
翌日インラック首相は、早速国王のご指摘の治水事業に取り組む事を表明した。
これは今回人災と言われている洪水を人為的に起こし、治水事業の
予算を認めさせ、土木事業を活発化させ、その利権にあり付こうとする
一部政治家等を喜ばせたのでは無いかとも感じている。
 
選挙目当てで打ち出された貧困層救済の各種公約も、大きく来年は
舵を切られるのでは無いかとも推測している。
また今回の水害等で、企業の収益が大きく落ち込み、来年度は
歳入不足も懸念されている。
何としても、取れる所をより税を取れとの、大号令が国税庁に
圧力として下る事も容易に推測でき、特に、狙われ易い
日系企業は要注意とも感じている。
 
しかし温暖化で苦しむ地球に、各国の足並みが揃わず、
一向に改善に向けた方針が決まらぬ事に業を煮やしているのであろうか、
3月には日本での大震災、10月にはタイでの大洪水、
また昨年12はフィリピンが台風に襲われた。
地球が人類に対し悲鳴を上げ、助けを求めている様にも感じる。
現状の無策では、果たして今年には、如何なる悲鳴を地球は上げるのか、
大変気になる所である。
 
一時は恩赦により帰国を噂されたタクシン氏であるが、
余りにも世論の反発が強かった為か、この案は取り止めとなったが、
今回は外相が同氏に新しいパスポートを発給する方針を示し、
これは新年の贈り物だと公言した為、また物議を醸し出している。
野党よりは、法律違反の可能性が大であり、服役を逃れ、
海外に逃亡中の人物にパスポートを発給する権限は内閣には
無いと外相を告発する姿勢を示している。
今年もまた同氏の話題で、右往左往しそうな様相を懸念している。
 
軍事クーデターの起きた翌年の2007年、タクシン氏が創設した
タイ貢献党は、裁判所より解党命令を受け、更に、111人の幹部を
含む大物議員が選挙違反等で公民権が停止され、
5年間の政界からの追放処分を受けた。
この御仁たちが、愈々今年5月には解禁となる為、
政界復帰が取沙汰されている。
チャルーム副首相は、無論処遇を決めるのはインラック首相であるが、
一部大物は入閣する可能性があると発言した。
国外に居るタクシン氏がどの様な指示を首相に出すか注目が集まっている。
 
昨年2011年のタイ10大ニュースを上げて見たい。
 
1. 日本の東北の大震災により、タイ経済は大きな影響をうける。
2. 50年ぶりといわれる大洪水が発生、大きな被害が出る。
3. 3年半ぶりに総選挙が実施され、野党タイ貢献党が返り咲く。
4. 新首相にタクシン氏の妹、インラック氏44歳が、最年少、初の女性首相となる。
5. 最低賃金300バーツ/日、大卒の初任給15,000バーツ/月が導入される。
6. 警察庁長官人事他、多くの要職にタクシン派の人材が登用される。
7. 世界遺産に登録されている寺院を巡り、タイーカンボジア間で紛争が巻き起こる。
8. 金、石油等の埋蔵が噂されるカンボジアにタクシン氏が急接近を開始する。
9. 米国の動向を受け、タイもミヤンマーに急接近を開始する。
10. 国民の絶大な敬愛を集める国王が、大変めでたい7巡目の
84歳のお誕生日をお元気にお祝いになる。

Tags:

Comments are closed