M&A月報No.142 「アセアン・サミット開催と赤組集会活発化」

アセアン10ヶ国の首脳をタイのホアヒンに招き、アピシット首相は
アセアン・サミットを主催した。

国王がこの首脳ご夫妻をホアヒンの宮殿にご招待され、王妃、
シリントーン王女もご出席となり、その記念写真が新聞の一面に
大きく掲載された。

お気に入りで可愛い新首相の晴れの舞台に、国王以下が花を添えられ、
如何にこの国の王室が新首相を支持しているかを大きく印象付ける仕儀、
報道となった。

アセアンを人間本位の共同体とする人権機構の設置を採択し、併せ
政治安全保障、社会文化の共同体も目指し、保護主義も阻止する事を採択した。
タイの若きエリート首相がリダーシップを発揮した事を高く評価したいし、
現政権が長期政権となる事を念じたい。

野党よりアピシット首相、カシット外相、コーン財相、チャワラット内相他6閣僚の
不信任案が上程され採決されたが、何れも反対多数で否決された。
結構な事である。

しかし、昨年のPADによる空港閉鎖を支援したカシット外相には与党内部よりも
賛成票が投じられた。
目下の首相の支持率は50.6%、タクシン元首相は23.6%との世論調査の
結果も併せ報道された。

昨年の黄組の反政府集会を見習ってか、赤組の集会が 活発化して来ている。
リーダーのタクシン氏が大型画面に登場、2006年の軍部によるクーデターは
プレム枢密院議長とスラユット元首相の企てであると両氏を激しく非難し、
特に両氏との対決姿勢を明確にした。

これは初めての名指しでの非難であり、その姿勢に注目が集まったが、
人望ある長老の一人のプレム氏を敵に回しての復帰作戦は無謀とも感じられる。
両氏は無論全面否定のコメントを出した。

昨年5月にはタクシン氏はプレム氏に面会し、和解を申し入れ、謝罪を行ったが、
これが受け入れられなかったのが原因とも言われている。
海外での安定した居場所も無く、資金も次第に底を付き、家族と別れての
放浪生活にも疲れ、焦りを感じさせる言動であるが、この時期、大きな混乱の
引き金にならぬ事を念じている。

ラオスの悲願であった首都のビエンチャンからタイ国境を結ぶ鉄道路線の
3.5Kmが開通した。
構想が提案されてから、ラオス側の資金難等で完成には15年もの歳月を要した。
式典にはシリントーン王女、アピシット首相等がタイ側より参加し、華々しく
開通式が行われた。

ラオスは従来の車による輸送から、鉄道に切り替わる事により、約40%もの
コスト削減が図れる事や、今後、中国、ベトナムへも鉄道網が活用出来る様に
なる事に大いに期待を寄せている。
タイ、ラオス双方に取り喜ばしい朗報であった。

景気動向を考える上で重要と思っている指標の中で、ホテルの稼働率があるが、
この度、下記数値が発表された。
これはタイ・ホテル協会の発表である。
目下建設中の内の約60〜65カ所が工事を中断している。
また完了した2つの新ホテルも営業開始を来年に延期した。

稼働率は昨年同月比でバンコクで80%から50%に、北部チェンマイ等では
70%から40%に下落している。

従業員の勤務日も24日から20日に減らし、給与も10〜15%減俸した。
通年で観光事業に携わる約8万人の雇用が失われるとの事である。
またレストラン協会の発表によると、売上高が30〜50%下落しており、
事業閉鎖に追い込まれている店も多いとの事である。

BOIの発表によると、海外よりの投資も72.6%に減少しているとの事である。

一方、邦人相手の引越し事業は多忙を極めている由であるが、シラチャの
日本人学校では生徒数が半減したとの事である。
多くの富裕層のタイ人は平静を保っているが、数字は想像以上に悲観的な
ものであった。

不景気風の吹く中、世界の長者番付が発表された。
タイ人として3人が入って居た。
タイ人としての1位はレッドブルで有名な健康ドリンクのオーナ。
2位はウイスキー、ビール等の酒類王。
3位はブタ、鳥、エビ等の輸出で有名な食品王。
これ等を見ると食べ物、飲み物のオーナー経営者がトップとなっている。
やはりお国柄を感じさせる結果であった。

アピシット首相は業界では有名な元BOI長官のサタポーン氏を、景気浮揚策の
起案の為起用した。
同氏は、現在の状況は92年のタイ流血事件当時と似ているが、97年の
為替大暴落の時よりは、ましな状況であると分析している。

タイの先行きには楽観の見通しを述べているが、昨年の空港閉鎖による
世界世論の厳しい批判を、早く払拭する事が重要と述べている。

観光事業を重要視すべしともコメントし、海外よりの投資家に不便を掛けぬよう、
縦割りの組織の弊害を打破する、ワンストップ・サービスの充実が重要と
認識していると述べている。

政府よりは10億円の予算を割り振られており、BOI長官時代に示した彼の辣腕で、
タイの恵まれた農業関係の資源を有効に活用し、経済の活性化が進む事に
期待を掛けられている。
68歳の彼が今後打ち出す施策に注目してみたい。

読者の中には関心をお持ちの方が多いと感じているので、タイ国が運営している
THAILAND ELITE CARDの現状に付き報告をしたい。

これはタクシン氏が首相時代に始めたクラブで、絶えず、タクシン氏の影響力が
無くなった時にはどうなるかと疑問を持たれていた国が発行したメンバーカードである。
先の軍事政権誕生時にもその中止が取りざたされたが、又今回アピシット政権でも
中止かとの報道が聞こえて来た。
世界60カ国以上の2,600人に販売が為されている。

第1位の国は韓国、2位が日本、3位中国、シンガポール、インドネシア等の
アジアの諸国が上位を占めている。
損はタイ観光庁の宣伝費で埋める事が前提になっていたが、それが不可との
方針になって来ているものである。

全額返済して中止にしようとすると30億バーツの資金が必要となる。
カード会社としては、サービスを有料にしての継続、会社の民営化等を考えている様で
あるが、下名よりは、この様な時はもっと会員の意見を聞くミーティングが最重要と説いた。
世界に類を見ない素晴らしい企画であり、継続を模索するべきである。
それには、会員の意見を聞き、タイ国としての明確な不退転の決意を契約書で
表明すべきである。

カード会社が支払わねばならぬ案件に付いては、そのコストで会員に負担頂く。
コストが不要なワークパーミット等をその代わりに付帯する。
新会員権は譲渡不可として会員を募る。

等々の代案を提示し、継続を前提とした政府との折衝を依頼した。
近々結論を得るとしているが、身内だけで議論をしている危なさを感じた。

しかし、最大の問題は60カ国もの国々より、タイは政権が代われば、前政権の
約束は反故にするのかとの訴訟等を起こされる事であり、この点は関係者一同も
深刻に受け取っている所である。

出方次第によっては、弁護士を起用し、タイ国と争って行く姿勢を見せ、
牽制したいと思っている。
その際はメンバー各位のご賛同を得たいと思っている。
本件に付き、ご意見等があれば是非お聞かせ下さい。

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