M&A月報No.133 「アナン元首相の苦言と最高裁でのある事件」

1992年のタイ流血事件の折に、反政府側として民衆を引っ張った
元バンコク知事のチャムロン氏であるが、当時の首相と共に国王に叱責され、
バンコク知事の任も解かれ、その後静かにしていたが、タクシン政権になって
から、またぞろ反政府活動の牽引者として登場してきた。


懲りない人物である。

今般、また彼をリーダーの一人として、反政府活動(PAD)の集会が拡大の
兆しを見せて来た。
目下の主たる論争点は、暫定政権が改定した新憲法を更に自分達に有利に
なる様、再改定しようとするサマック政権に反対の狼煙を上げている訳である。

遂に、3大長老の一人であり、未だに最も首相になって欲しい人と言われて
いるアナン元首相が両者に苦言を呈した。

“両者の亀裂は修復不可能な状態になって来た。
人々は意見を異にする者の言い分を尊重し耳を傾けるべきであるし、
その解決はお互いに論争する事である。
デモと武力で相対峙するのみでは何の解決にも成らない。

しかし、現状は悲しいかな、相互の不信感で話し合いで解決出来る様には
見えない状況となって来た。
20億バーツもかけて、新憲法を元の憲法に戻す様な投票はすべきでは無い。
条項ごとの見直しを論議すべきである。
PADは現内閣の総辞職を求めているが、頭を冷やし、デモを中止する様、
リーダーのDr.PRAWASEに求めい“

これに対しサマック首相は、

”現政府はきっちり機能しているし、自分は状況を十分掌握している。
過去の首相にとやかく言われるのは筋違い”

と撥ね付けた。

プレム氏に楯突き失脚したタクシン氏、今回はアナン氏に反発したサマック
首相、どういう結末になるか注目したい。

9人の新しい判事が認証を受ける為国王に拝謁した。

“貴方方は私の代理として、国が良くなる為に尽くさねばならぬ。
法にのっとり、公明且つ迅速に物事に対処せねばならぬ。
貴方方が職務をまっとうすれば、国が困難に直面する事は無い。
全国民の為に仕事をまっとうせねばならぬ。
貴方方の知識と自信を持って判決を下す事が、現在、国が直面している
問題を解決する。
もし国民が困難に直面すれば、国は大きな打撃を受ける“

と結ばれた。

現在のサマック首相対PAD他の連日のデモの件を指しているものと思う。

またタクシン氏の各種収賄疑惑に対し、判事が弱腰で遅々として進捗しない
事に苛立たれて居るものと感じる。

タクシン氏の件で、国民が二手に分かれ言い争っている。
これでは国民が幸せでは無く、これが続けば国力は下がる。
早く、自信を持って、法に則り、白日の下、自分に代わって判決を下せ
(タクシン氏に有罪判決を、と取れる)と言っておられるのだと感じた。

しかし、景気の改善、強いタイを諸外国に見せたいという見地よりすると、
好きではないがタクシン氏に期待したいというのが、未だに世論ではなかろうか。

一方、国王、長老等は、

”タイは餓死、凍死が無い、温度、作物、水に恵まれた世界で数少ない
恵まれた国。足るを知り自給自足を説く国王の教えに忠実であり、
何も高度成長、バブル経済等は望む必要が無い。
メコン川の様に悠々とゆっくり進めば良いではないか”

とする保守派。
果たして、国民はどちらを支持するのであろうか、今後の動向に注目したい。

1〜4月は約4〜5%のインフレ率であったのが、5月に入り、石油価格の
高騰等もあり、この10年間で最高の7.6%に跳ね上がった。

これに伴い、最低賃金もまた上昇する事となり、景気の先行きに暗雲が
立ち込める状況となって来た。
安かったタクシー運賃も遂に値上げが認可された。
庶民が財布の紐を急激に締め出した事を感じる日々である。

不用意な発言も目に付くサマック首相、この難局を乗り切るには役不足
の感がする。またぞろ、タクシン待望論が出てきそうな状況である。

以上の様に考察していたら大事件が勃発した。
最高裁の、とある場所に菓子箱があった。
書記官が傍らに居た3人の弁護士に聞くと、皆さんで分けて欲しいと言った。
通りかかった判事が、それを皆の前で開けるように指示。
開けて見ると200万バーツの現金が出て来た。
この3人はタクシン夫妻の裁判を担当している判事に渡そうとした事を認めた。

即刻、この3人は法廷侮辱罪と贈賄罪で起訴、禁固6ヶ月の実刑が言い
渡された(内一人はタクシン夫人の縁者であるが、この御仁は逃走、
目下、行方不明である)。
無論、タクシン夫妻は一切の関与を否定。

出来すぎた話だが、もしこの良識ある判事が通り合わせず、開くことを
命じていなかったら、この菓子箱は担当判事に届いていた事より、
民意は反タクシンに大きく動く事件であったと分析する人が多い。
国王の頭痛は益々増える様相である。

国王に対する不敬罪の発言をしたと物議を醸していたチャカポップ大臣で
あるが、遂に各方面よりの圧力により辞任した。
タクシン氏の信任を失った事が大きかった様に感じる。

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