M&A月報No.131 「連立与党解体の危機」

 

プミポン国王はスラユット前首相を再び枢密院議員に任命した。
枢密院は王室事業に対する助言権限を持つ機関である。
今回の任命では、同氏含め3人を任命しており、これでプレム議長
以下議員18名での構成となる。

さて、新政権のサマック首相であるが、次回選挙には出馬しない意向を表明した。
2軍監督と言われている同氏であるが、次期政権においては1軍監督及び
1軍での政権運営と政党政治の基盤強化を望んでいるのであろう。
現政権中に憲法を改正し、議員資格失効中の1軍111名を復帰させ、
タクシン院政の下、一時代を築いた旧愛国党体制復活への道筋を
作りたいと言ったところか。

昨年発効した新憲法(237条)では、政党幹部による選挙法違反が認定され
れば、所属政党が解党処分を受けることとなっている。
現在、与党第一党・国民の力党のヨンユット下院議長は、同法違反で選挙管理
委員会より訴えを起こされているが、もし最高裁判所が有罪判決を下せば、
同議長は議員資格を失うほか、同法違反当時、国民の力党の副党首だったこと
より、同党が解党処分となる可能性がある。

また、連立与党の一角であるタイ国民党、中道主義党の2名の幹部はすでに
同法違反の認定を受けていることから、選挙管理委員会は憲法裁判所に対し
両党解党の告発を行っており、もしこれが認められれば、両党の全幹部が
5年間の政治活動停止となり、また党所属の議員は60日以内に新しい政党を
見つけなければならなくなる。
連立与党の議席には影響しないが、両党所属の3大臣は辞職を迫られること
になる。

国民の力党のヨンユット下院議長のケースも上記両党のケースと相違がない
ことより、一気に連立与党の計3党が解党処分ということになれば、国は
大混乱となり、国家として前に進めなくなる事態になる。

サマック首相は、今後このような事態が二度と起きない様、前述の様に、
いち早く憲法改正を実現し、総選挙を実施、新政権を発足させると共に、
新憲法の下で民主国家としての安定的な政権運営を軌道に乗せ、
国際社会よりのより高い信頼・評価を得たいところであろう。

世論はどうか?当面、もしタイ国民党、中道主義党、いずれかの政党が
解党処分となった場合は、大半が総選挙の実施を希望。
そしてその約半数が国民の力党に投票すると答えている。
サマック首相の支持率は47.6%、タクシン氏の政界復帰支持率は53%、
引き続き、タクシン派の根強い支持率が伺える結果である。
今後の政局から益々目が離せない。

ただそのサマック首相であるが、カジノ合法化案の検討開始に続き、
人事でも少々調子に乗っているようである。
現政権の内相はタクシン氏側近のチャルーム内相であるが、
サマック首相は、殺人容疑での逮捕歴と陸軍からの脱走に伴う除隊処分を
受けていた同氏の三男の復職と剥奪した少尉の階級返還を認めたのである。

三男は2001年に長男と共にバンコク市内の飲食店で警官と乱闘。
警官は射殺され、三男は国外逃亡していた。
2002年にマレーシアのタイ大使館に出頭、帰国後殺人罪で起訴。
但し、政治的圧力が掛かったのか、証拠不十分で無罪判決。
長男も現政権発足後、保健副大臣秘書官に任命されていることから、
野党民主党や世間から激しい批判が相次いでいた。

これでは「タイは何でもあり」と思われてしまっても仕様が無いと思うし、
調子に乗るのは程々にしておかないと、一昨年前のクーデタ ー再発の
可能性も必ずしも否定できない。

一方、タクシン氏であるが、UAEで、アジア企業への投資を目的とした
50億ドルの私的ファンドを創設する意向であることを明らかにした。
またタクシン氏と共に暫定政権時に追放された旧愛国党所属の1軍とも
言うべき111人は、社会貢献を目的とした財団を設立した。
2軍による政治運営の傍らで、1軍も積極的な活動を行っているようである。

一昨年前の国王誕生日(12月5日)に、国王の肖像画にスプレーを
吹き掛けた行為で不敬罪に問われ、実刑判決を受けたスイス人がいたが
(その後、国王の恩赦で釈放)、今度は、市民団体のタイ人男性が不敬罪で
当局より事情聴取を受けた。
どうやらこの御仁は、映画館で国歌が演奏されている際、起立をしなかったらしい。
「国民は起立、不起立を選ぶ権利がある。不敬罪には当たらない」と
主張しているらしいが、さて、審判の結果は如何に。タイでは珍しい事件である。

タイ開発調査研究所(TDRI)は5〜10%の大幅な賃上げを政府に提言した。
インフレ率4%前後を考慮し、これを最低限カバーするための上昇率であり、
労働団体も当案に同意している。
今後、賃金委員会が賃上げ問題を審議することになるが、大幅な賃金UPは、
企業側のコスト高騰及び反発を招くことから、慎重な審議が求められる。
それにしても、企業にとってはこの問題は毎年避けて通れず、
頭の痛いところであろう。

ソンクラン期間中に発生した交通事故は計4,243件で、死傷者は4,803人、
その内死亡者は368人であった。
主な原因は、飲酒運転とスピードの出し過ぎであった。
毎年、ソンクラーン期間中は、特に飲酒運転による交通事故が多発、多数の
死傷者が出ていることより、「1年で最も危険な7日間」と言われている。

ようやく重い腰を上げた話題のチャルーム内相は、ソンクラーン期間中の
酒類売買の規制策導入を表明した。
公聴会を実施し、早ければ今年の年末年始までに関係法令の公布を目指している。
反発も予想されるが、多発する事故・死傷者を減らすには、今の所、これしか
有効な手段はないと思われる。

北京五輪の聖火が、インドからの特別機でここタイにも到着した。
聖火リレーは、約2,000人もの治安当局による警備下、バンコクの中華街から
旧国会議事堂前広場までの約10.5キロの区間を80人のランナーで行われた。

ルートの途中で、「チベットに自由を」と書かれたプラカードなどを手にした
人権活動家ら約100人が中国国旗を持った人々と口論になったが、
日本(長野)と比べると、さほど大きな混乱はなかったようである。

第29回バンコク国際モーターショーが無事閉幕した。
総入場者数は約160万人超に達し、自動車予約台数は前年を上回る
約1万8,000台超、売上総額約400億バーツ超の成果であった。