M&A月報No.118 「不安定な暫定政権事情と日タイFTA締結へ」

 

遂に暫定政府に取っては大変な事態となって来た。
即ち、上海発の世界株安現象が懸念され出した中、暫定政権でNo.2の座に居る
プリディヤトン副首相兼財務相が突然の辞任を発表したのである。

現在の閣僚の中で、他に金融、経済に明るい大臣は見当たらない。
この状態では実業界は不安な世界に追い込まれる。
理由は、彼に相談も無く、タクシン政権のNo.2であったソムキット氏を閣僚に
起用した首相への不信感、並びに現政府関係者の中に未だ多数のタクシン
支持派が残っており仕事がやり難い点と見られている。


後任には民間のシンクタンク、タイ開発調査研究所(TDRI)のチャロンポプ所長を
起用し、その他若干の内閣改造を行った。
彼は56歳で有名な経済学者ではあるが、政界や財界での経験は無く、手腕の程は
これからの活動を見なければ不明で不安である。

この様な事態では、また支持率が大きく低下しそうであるし、スラユット首相の
リーダーシップに大きな疑問符が付く。
世論調査では首相は落第との評価が下された。
軍部取り巻きとゴルフを楽しんでいる事態では無い事を認識して貰いたいものである。
清潔な好々爺では不安定なタイになってしまう。

4月にはスラユット首相が訪日し、FTAを締結する予定であるが、工業省は日本より
の投資が加速するとの見方を発表した。
自動車、電子、鉄鋼分野のタイへの投資が拡大するとの見方を示すと同時に、
地理的に近い、裾野産業が充実している、購買力がある、更には良質の労働力が
豊富にある等より両国の関係が強化されると期待を膨らましている。

農産物、繊維、衣料等の製品の日本への輸出の拡大もあると見ている。
目下混迷している政治も秋には総選挙があり、安定の方向に向かうと判断している。
また看護士等の人材の日本への派遣にも期待を寄せている。

日本より競争力ある自動車部品等が流入してくる懸念を示している所もあるが、
既に進出している所は十分に競争力を付けているし、自動車メーカー側も強く
現地製品の購入を通達しており、この懸念は少ないと判断している。
3,000 CC以上の高級車も今後輸入が拡大されると見ており、良い事尽くめの
FTA締結と大いに評価している。
マレーシアとの競争にも自信を深めており、締結後の業界動向に注目したい。

タクシン氏が保有していたSHIN CORP傘下に、ITVなる民放があったが、ここが
過去の利権に対する契約違反金980億バーツの首相府への支払い命令に応じ
きれず、12年間の営業に一時終止符が打たれた。

タクシン政権時代にはその応援を、また野党を非難するメディアとしての活動を
行なって来た感がある。約1,000人の従業員は職を失う事になった。
ここにもタクシン憎しの影響が出ている。
なお複数の企業が同社買収に興味を示している。
しかし従業員他への影響を懸念してか、急遽、政府広報局が現在放送中の
11チャンネルと合わせTITVと改名し、国営として放送を続行する結論となった。
暫時めでたしである。

タクシン氏は現在滞在中の英国よりビデオレターで、同氏一族が立ち上げた
タイコム財団を通じて、海外に留学中のタイ人学生に奨学金を送ると発表した。
理由は同氏が海外で滞在中の学生と懇談した所、多数の学生より資金難に
陥っているとの報告を聞いた為としている。

彼が財団を作り、困っている居る人々を救う案には賛成であるし、追われる前に
するべきであったと思うが、遅きに失した感がある事と、海外に既に留学している
子弟の親が貧困とはとても考えられない。
海外留学=富裕層である。
折角の資金、他に回すべきでは無かろうか。
もしくは、この富裕層の人々が自分の帰国を支持する事を念じているのであろうか。
何か的外れの感がする。

検察当局が世論に押され、遂にポチャマン前首相夫人を法廷に引っ張り出した。
嫌疑は1997年にSHIN CORPの株450万株をポチャマン夫人の名義人と思われる
家政婦より5億4600万バーツで義兄に譲っている。
この譲渡に夫人の秘書が関わっており、夫人はお金を払い、それを取り戻す動きを
SIAM COMMERCIAL銀行を通じて行っている。
秘書は”夫人の指示に従っただけで何も知らぬ” と供述。

2001年、当局がこの取引を糾した時に、夫人はGIFTと答えている。
しかしこの取引は証券取引所を通じて行われており、ブローカーにも738万バーツが
FEEとして支払われており、VATも収めている。
GIFTなら、この様な経費は不要なはずで、脱税を目的にGIFTと偽ったのでは無いか
との嫌疑である。
各々は500万バーツの保釈金を積み保釈されたが、審議は5月14日より行われる。
有罪となると最長14年の禁固刑がある。
検察、弁護士双方の攻防戦が見ものである。

一月の月報で、タクシン氏が300から2,000バーツの日当を北部住民にばら撒き、
バンコクに押し掛ける様に画策していると記したが、2,000人規模で、この連中が
旧王宮前広場でラリーを行う状況となって来た。

この影響を懸念し、ソンティ国家評議会議長は首相に対し、非常事態措置を適用する
様求めたが、目下の所、余り盛り上がっておらず、首相は態度を保留している。
92年5月の流血事件の再来は勘弁頂きたいものである。

同じく一月号で書いた、タクシン氏の息子と娘に対する所得税で結論が出された。
議長は当社経理会社会長のVIROJ氏で、20頁の報告書となっており、37%の納税を
命じている。総額は105億バーツとなる。
政府関係機関でこの報告書が承認されると、二人は多額の納税を迫られる。
今後の進展に注目したい。