M&A月報No.117 「暫定政府の支持率低下と今後の日タイ関係は?」

 

就任当時は80%近くあった暫定政府の支持率も、為替防衛で見せた
素人ぽい不手際、不人気な外国企業規制法、もたつく爆弾騒ぎの
犯人検挙等で、35%を切る状況となってきた。

それでも首相は寸暇を惜しんで、取り巻きとゴルフを楽しんでいる。
これではタクシン待望論(29%に回復)に火を付けかねない。
ここは後約半年、寸暇を惜しんで頑張って欲しいものである。

新空港の社長が健康、高齢を理由に辞任した。
本当の理由は、今回の滑走路に入った亀裂から、一部国内線を旧空港に
戻さざるを得なくなった責任を取ってと思われるが、タクシン氏によって
任命された要職の人物に、暫定政府より圧力が掛かっている気がする。

更に問題が拡大。
遂に政府はドンムアン旧空港を国際線にも使う方針を打ち出した。
慌てて開港した付けであろうか、実情はかなりひどい状況の様である。
ドンムアンの地元は歓迎しているが、航空会社他よりは、乗客が混乱する
との懸念が表明されている。

その後の調査で、修復可能との見方が発表され、ドンムアンに戻るか
否かは、各航空会社の判断に任せられた。
結局、再開は3月25日に決定、ノックエアー、ワンツウゴー、PBエアーと
TGの国内線が利用する事になった。
TG以外の3社は全便で、計77便が使う事になった。
この結果、国際線は新空港に残る可能性が増大したが、面子よりも
安全面で本当に大丈夫なのか確認して欲しいものである。

警察庁長官も今回の爆弾事件の真相究明が手ぬるいと批判され、
更迭の噂が各所より上がっている。
これもタクシン人事であっただけに、追求が厳しいと感じる。
遂に本件が現実となった。

KOWIT長官は、部下に命じるだけで、どの様に大組織を動かすべきかを
知らず、9月の任期満了を待たず異例の更迭となった。
新たに、タクシン氏により傍流に追われていたSERIPISUTH氏が長官に
任命された。
しかし彼は唯我独尊的な所があると、これまた前評価は余り良くない。
反タクシンであった点が買われたのであろうか。
今後の捜査で見せる彼の手法、手腕に注目が集まっている。

タクシン政権時代、側近中の側近でNo.2の存在であったソムキット元副首相だが、
タクシン氏失脚後、愛国党を離党し、次期総選挙で打って出る構えを見せていたが、
何とスラユット首相は彼を経済強化委員長に任命した。

これには反タクシン派は無論、実業界、世論等より驚きと同時に反対の声が
上がった。結局、彼は一週間で辞任に追い込まれた。
任命する方もする方だが、受ける方も如何なものかと思っていたが、またまた
暫定政府、スラユット首相の迷走振りを露呈する事件となってしまった。
彼には相談する良き側近が居ない点が気になる。
また支持率が下がる事であろう。

タクシン氏失脚の元凶と成ったSHIN CORPの株売却であるが、これを買った
シンガポールの国営企業テマセクもその後の両国の関係悪化を気にしてか、
今般暫定政権が買い戻しの可能性を示唆した話に乗り気を示している。

タイ政府関係者、特に軍部の関係者が、サテライトを外国企業に牛耳られて
いる事で、国の機密事項が外国に漏れる事を懸念し、買戻しを積極的に
持ち出している。

2〜3社のタイ企業も手を上げており、両国の関係改善を図るため、
テマセクが売却に応じる可能性も出て来た。
今後の進展に注目してみたい。

先月号でタクシン氏訪日時の日本政府の対応に付き問題を感じると記したが、
2月25日付けの日経「けいざい解読」“迷走タイFTAの教訓”で大田編集委員も

『ある日本政府の関係者が送った花束を床に叩きつけた。
余程ドタキャンが腹に据えかねたのであろう。
手のひらを返すような扱いに激怒したのも無理は無い。
このドタバタ劇から日本が学ぶべき教訓とは何か。
混乱は仕方ないと漏らす政府幹部もいる。
だが外交とは結果が全てであるはずだ。
日本が新旧両首相を怒らせてしまったのも事実である。
途上国の政治は先進国と同じ尺度では測れない。
権力者が簡単に転び、時には敗者が返り咲く。
予想外の展開に戸惑い、場当たり的な対応に陥るのは、
相手国の内情の理解が不十分な証左だろう。
アジアとの共生を目指す日本の経済外交には、
複眼的な情報収集と分析の力が欠かせない』

全く同感であり、外務省は目配りが足りぬ。
立派な新築の大使館に篭もっているのみでは先が見えない。

クーデターの折にも感想を書いたが、当国に派遣されている外交官は、
どれだけ多岐に渡ったタイ人とお付き合いしているのか疑問を感じると共に、
将来の日—タイ関係がこの様な人々に託されているのではまた心配になって来る。

タクシン氏には過去の恩義に関し謝辞を述べ、現タイ政府には毅然と
その理由を述べる様な外交であって欲しいものである。