M&A月報No.115 「国王スピーチ2006」

 

12月5日、国王の79歳の誕生日の前に、恒例の国軍閲兵の儀式が
華麗に行われた。

国王はまずこの一年間の忠誠に付き謝意を述べられた。
続いて、“我が国は、人々が互いに協力し合い、その各々の職務を
全うした事により、独立国家として存続し得た。
軍人の職務は国を守る事である。
併せ、タイ国民として人々と協調し、国の平和と繁栄に寄与して欲しい。
軍人は全ての活動に対し、対処し得る体力、気力、正直さ、協調性を
養って欲しい。勇気、知力、忍耐、耐久力を持って軍人としての勤めを
果たして欲しい“と結ばれた。

多くの人々がローソクに火を灯し参賀に参加した。
国王は恒例のスピーチを行われた。
“今年は特にバンコクが洪水の危機に晒されたが、バンコク北部の人々を
犠牲にし、堤防を決壊させ、人為的に洪水とさせバンコクを救った。
1995年の時より今年はもっと厳しい状況となっている。
この問題に付いては、政府に任せるのでは無く、人々が知恵を出し合い
解決策を見出していくべきである。
政治的問題ではなく、現政府は厳しい状況に置かれている。
それは政府関係者が高齢であるという事である。
しかし高齢者には過去の経験と知識、知恵がある。
若い人々は高齢者を見下げる様な振る舞いがあってはならない。
しかし、もしこの高齢者達が自分達の経験を十分に生かす活動をしなかったら、
それは国家の危機につながる。
スラユット政権は政治的混乱により誕生した。
結果、既に引退している人々に再登場願うという事態になっている。
スラユット首相はもっともリーダーに相応しい方である。
自分は彼に命令もしないし又する事も出来ない。
この困難な暫定政権としての一年間を無事に乗り切ってくれる事を信じている“
と結ばれた。

今年は例年に無く短いスピーチであったが、この一年間はスラユット首相に
全幅の信頼を持って任せたとの印象を人々に伝えたと思う。
プレム、アナン、パオ、アーサー等の影響力絶大な高齢者を時代遅れと
非難したタクシン若手旗手に対する苦言であった様にも感じる。
例年より花火の数が少なく寂しい気はしたが、クーデター後の状況を
勘案するとやむを得ないと感じた。

バーツが他の通貨に対し高騰していたが、これではタイよりの輸出に
問題が出ると遂にBOTが動いた。
2万ドル以上の外貨をタイに送金し、バーツ転換を行うと、実際の使途を
明確に出来ないと、その30%を無利子で一年間BOTが預かるというものである。
この効果かバーツは軟化した。
大きな為替変動は勘弁頂きたいものであるが、クーデターのあった国の
通貨が強くなるとは余り聞いた事が無い現象と驚いている、と原稿を
書いていたら、翌日株価が急落した。

二度に亘るサーキット・ブレーカーの発動となったが、最大約20%の
下落となり、最終的には約15%の過去最大の下げ幅で終了した。
BOTのプリディヤトン副首相は予想外の展開となったと釈明に奔走する一方、
株の購入資金であれば30%の預金項目は撤回する等、大慌ての対応となった。
対ドル換算レートがこれにより35バーツを超える危機は回避されたとのコメント
も出されたが、暫定政府の素人集団がとんでもない方針を出してくれたとの
不信感もかなり芽生えた事を感じる。

とんでもない規制を発表した翌日より、BOTの総裁が休暇を取っていたのも
驚きなら、何故この様な規制案を思いついたのかと思っていたら、1991年の
リにおける対応策を参考にしたとの事、何おかいわんやである。
一部自動車メーカーの圧力で動いたのか、定かではないが、国の信用を大きく
傷つけたものと思う。
参考にするなら、先進国の過去の対応を参考にして貰いたいものと思うし、
一時のバーツ高は悪い事ではないのでは無いかとも思う。
関係者は自画自賛のコメントを発表しているが、今回の事は大きくタイの威信を
傷つけ、未だに後進国のイメージを植え付けたのではないかと残念に思う次第である。

タクシン氏の旗振りで数年前に始まったTHAILAND ELITE CARDであるが、
やはり暫定政権で話題となった。
スラユット首相とプリディヤトン副首相が話し合い、中止を決定、入会金を返却する
方向で担当大臣に指示するという内容であった。
タクシンPROJECTは全て憎しの感である。

たまたまゴルフ場で、元外務大臣、現国王の特別秘書であるアーサー氏に会った。

このCARDに言及すると、“金を返せばよいという問題でもなく、国の信用に関わる
問題なので複雑な様相だな”とのコメントで、事はそう簡単には決着せぬだろう
との見方をしていた。
今後の当局の動きに注目してみたい。