M&A月報 No.239「新憲法公布」

 

一度は新憲法案を政府に差し戻されたワチラロンコン国王陛下であるが、6日、

新憲法にご署名され、同日中に公布・施行された。新憲法は、国民投票で賛成多数で

承認された憲法案に比べ国王陛下の権限を強めたと解釈できる条文が含まれている。

今回制定された新憲法は、1932年の立憲革命で絶対王制から立憲君主制に移行して

以来20番目となる。

 

国王陛下は、宮殿で開かれた式典において、“民主主義体制とタイ国民の主権を擁護するため新憲法を順守するよう”国民に求める声明を読み上げられた。

 

今後の焦点は、クーデターで発足した軍事政権から民政移管への時期である。プラユット首相は新憲法公布から総選挙の実施までに、関連法の整備などで最大19カ月かかると述べてはいるが、早ければ、おそらく来年中に総選挙が実施される見込みである。

 

しかしながら、新憲法は軍事政権が任命する上院の主導で軍関係者を首相に選出することを可能とするなど、軍が政治への関与及び影響力を維持する内容が含まれていることをはじめ、国家平和秩序評議会(NCPO)は、新憲法公布後も、プラユット首相に発動権があり司法や立法の権限をも凌ぐ超法規的な暫定憲法44条は有効のままであり、これまで同条に基づき発動された命令は全て効力を継続すると主張しており、今後も、国家及び政治安定のため、軍政色の強い状況は継続していくであろう。

 

新憲法公布に対しては、民政移管に向けたロードマップの第一歩になる等、おおむね歓迎の声が多勢であるが、市民の政治活動、人権侵害や言論の自由への制限の継続は続く

ため、真の国民和解の実現にはまだまだ乗り越えなければハードルがあり、そこには、亡くなられたプミポン前国王がいつも仰られていた国民の一致団結や協調が欠かせない。

 

1932年の立憲革命で絶対王制から立憲君主制に移行したと上述したが、その立憲革命を記念するプレートが消え、別のプレートに置き換えられた事件が発生した。

 

このプレートは1936年に埋め込まれたもので、ラーマ5世騎馬像の脇の路上にあった。新たなプレートには「三宝(仏教の仏・法・僧)、家族、国家の尊重、国王への忠誠は国家繁栄の手だて」の言葉が刻まれている。誰が取り換えたのかは不明であるが、

立憲革命記念のプレートは「タイの民主主義誕生の象徴」と見なされていただけに、

民主派活動家グループが元のプレートに戻すよう訴えていると同時に、盗難事件として警察に捜査を求めている。

 

しかしながら、警察は「プレートの所有者が誰か不明」との理由で事実上捜査を拒否し、

また、軍事政権/文化省芸術局もプレートについて「革命の発表が行われた場所を指し示すシンボルにすぎない」と歴史的価値を否定している。

軍政は、事態の沈静化に躍起になると共に、新たなプレートの撮影も禁じるなど神経を尖らせているが、今後の動向とこの事件の背景が気になるところである。

 

政府は閣議で、ワチラロンコン国王陛下の誕生日の7月28日と、プミポン前国王の命日の10月13日の両日を国民休日とすることを決定した。

併せて、プミポン前国王の戴冠式が行われた5月5日(戴冠記念日)は国民休日ではなくなり平日となる。それに代わり、新国王の戴冠式の日程が決まり次第、新たな戴冠記念日が発表され、その日も国民休日になるかと思われる。

また、長年に渡り国民の心の奥底に染み付いたプミポン前国王のお誕生日の12月5日は、「ラマ9世記念日」として休日のままとなる。

 

また、プミポン前国王の火葬の日程が、ワチラロンコン国王陛下の承認を得て、10月26日に執り行われることも決定した。一連の儀式は王宮前広場において、10月25日から29日の5日間に渡って営まれる。火葬当日の26日は休日になるとのことである。タイ渡航の際には、服装や行動など充分に配慮される必要がある。

 

プラユット首相肝いりのEastern Economic Corridor(EEC)東部経済回廊構想であるが、

初会合が開催され、ウタパオ空港の拡張事業や同空港とバンコクの2空港をつなぐ高速鉄道建設の着工などが承認され、いよいよ官民合わせ総額1兆5000億バーツに上る

大規模開発事業が本格的に始動した。これに併せ、チョンブリ、ラヨーン、チャチェンサオの3県に跨る地域における、EV(電気自動車)、PHV(ハイブリッド車)、医療、航空、ロボット等の特定産業の投資をも促進し、次世代都市、スマートシティーに向けて、

インフラを含め、一体的な開発が益々具現化していく。巨大国家プロジェクトであるが、

そこに目下躍進中のAI(人工知能)やIoTをどのように駆使していくのか注目している。

 

EECにおける官民連携での最初のケースとしては、国営タイ石油会社(PTT)と国立科学技術開発庁(NESDA)による、研究開発(R&D)センター「ECCイノベーション(ECCI)」の共同開発となり、上記特定産業のR&Dセンターとして機能することになる。

 

第38回バンコク国際モーターショーが閉幕した。今回の購入予約台数は計3万9022台で、当初予想を上回り、期間中の来場者も160万人であった。

自動車のメーカー別では、トヨタ自動車がトップで5465台。次いでホンダ5279台、マツダ3419台、いすゞ自動車2974台、メルセデス・ベンツ2090台などの順だった。マツダ、いすゞが躍進、大健闘かと思う。

自動車業界の低迷が叫ばれて久しいが、EV(電気自動車)、PHV(ハイブリッド車)への期待もある中、輸出を含めた業績回復へ期待したい。

 

今年のタイ旧正月ソンクラン祭り、別名「1年で最も危険な1週間」中に発生した交通事故は、例年通りの再三たる注意喚起にも関わらず、前年比7.05%増の3690件、負傷者数は同4.16%増の3808人、また死亡者数は390人となった。死亡者数のみ前年と比べ52人(11.76%)減少した。

 

今年は事前にプラユット首相が44条を発動し、自動車の後部座席の乗客もシートベルトの着用を義務付けたり、また、警察当局もこの1週間を最も警戒し、取り締まりを強化したが、例年同様、特にスピード違反と飲酒によるオートバイ事故が後を絶たず(全体の約80%)、また、事故が最も多く発生する時間帯は午後4~8時で全体の31%を占めており、当局による対策の手詰まり感も否めない状況が、残念ながら毎年続いている。