M&A月報 No.185 白い仮面運動と政府による米の高値買付問題



 2ヶ月近いお休みを頂き、神戸より戻って来たが、
 バンコクの暑さにはやはり圧倒される。
 
 久々に見るタイの新聞にはGUY FAWKESの白い仮面を被った
 若者の映像が多く掲載されている。
 ここに至った経緯は、タクシン氏の帰国を願い、憲法改正等を画策している、
 現与党に反対する抗議活動が、インターネットを通じて始まったための様だ。

 抗議集会も開かれる様になり、この白仮面の連中の写真が
 日々掲載される様になった。

 今回の特色は、リーダーが不在で、且つ参加者名も明確にならぬ
 不気味な集会となっている。
 ネットと連動した若者の政治活動の始まりと見る向きもあり、注目を集めている。
 6月2日に行われた集会には、1,700人が参加、6日は500人規模と
 見られており、黄組と同じく、タクシン氏をタイの政治より排除すると
 言った点では共通点があるとされている。
 
 25~44歳の若い世代で、関係者は集会が1,000人規模なら、
 フェイスブック上の支持者は5万人規模で、この運動は更に大きくなって行くと
 自信を仄めかしている。

 因みに、この仮面は一個120バーツで売られたそうである。
 その後この運動は地方都市でも1,000人規模で行われ、
 政治家や役人の汚職、現政府はタクシン氏の支配下にある等を抗議した。
 新たな若い世代の抗議集団が出来てくるのか注目を集め出した。
 
 タクシン政権誕生以来、農村部の票を獲得する為、米の政府による
 高価買い付けが継続されて来た。
 これの処理が上手く行われず、多くの古米の山を築き、
 これが4,000億バーツとなり、財政圧迫の大きな要因であると
 言い続けられて来たが、未だに解決策が見出せていない。
 
 今般、商業相が遂に、今までの購入価格は15,000~20,000バーツ/トンであったが、
 これを10,000バーツ程度に引き下げると発表した。
 当然とは思うが、これに農民が大憤慨、抗議活動を展開し出した。
 
 一方、この古米の山を巡り多くの疑惑が浮上して来た。
 それは所轄の大臣が、何処にどれだけの在庫が保持されているのかの質問に、
 明確に回答出来なかった為である。

 国の財政を圧迫し、一方、その在庫が何処にどれだけ在るかが不明では、
 血税の使われ方として大問題と成る事は必至と思う。
 本件が今後のタイ政局の最大の争点、問題点となる様相を呈して来た。
 
 タイ中銀の調査によると、2009年からの家計債務は3年間で
 60%増大したと発表された。
 2009年には5兆5,700億バーツだった債務総額が、
 2012年には8兆8,100億バーツまで膨らんだというのである。
 所得に占める債務比率が40%程度であったのに、今は70%に成っている。
 これに関連し、家計が貯蓄では無く、金、不動産、株式に向かっていると
 懸念を表明している。
 
 国税庁は、法人税が30%から23%に引き下げられた影響で、
 法人税の徴収が約20%下がり、またVATも目標を8%下回ったと発表、
 更に今後法人税が20%に下がる事もあり、これまた懸念を表明した。
 
 バラマキ政策による歳出の増加、景気を煽る為の法人税率引き下げ、
 これへの国民の反応等で、インラック政権は難しい舵取りを迫られる
 局面を迎えそうであり、今後要注意である。
 
 10年前にタクシン氏が政権の座に着いた時に、その一つの目玉商品として、
 外国の富裕層を狙って、国がタイランド・エリート・カードなる会員券を
 100万バーツで販売した。
 
 外国人に取っては、超優遇された会員券であり、飛ぶように売れるかと思いきや、
 やはり多くの人々は、タクシン氏が政権の座より降りた時の事を心配し、
 数千枚程度の販売に終わった。
 これでは、当然、大赤字となり、この恩恵に浴せ無い、タイ人よりは
 絶えず批判の対象となっていた。

 アピシット政権となり、全額払い戻しにより、この会員券を廃止に持ち込もうとしたが、
 VISAの恩典も付いていた事もあり、購入先40カ国よりの訴訟も心配の種となり、
 最終的には廃止を決断したものの、その時は政権の座を失っていた。
 タクシン氏の妹のインラック首相も、この赤字を懸念し、廃止の方向を打ち出したが、
 これにタクシン氏が激怒、結局今般、価格を200万バーツ、年会費20万バーツ、
 恩典も若干変更し、再度売り出す事になった。

 紆余曲折があっただけに、当局は10年間で1万人の新規会員を募るとしているが、
 楽観は許さないと思っていると同時に、未だに影響力絶大なタクシン氏の影をここにも見る。
 
 新聞報道によると、日本政府は閣僚会議で、タイからの観光客に対して、
 7月1日よりVISA 無しで、15日間の入国を認める案が了承されたと発表された。
 多くのタイ友人より、日本入国に際しての、VISA申請手続きが不平等で、
 大変面倒との不満を訴えられて居ただけに、大変結構な決定と評価したい。
 タイ国内でも歓迎ムードは広まり、今年の後半より、20~30%の割合で
 日本を訪れる観光客は増加すると発表された。
 
 これで更にタイよりの日本への観光客の増加が見込めると感じるが、
 何となく、中国よりの観光客が減少したから、穴埋め案の感じがするが如何なものであろうか。
 一方、これでタイ人の、国内旅行が減るのではないかとの懸念も表明されている。
 
 数年前に、赤組が街の中心部を占拠し、そこにある百貨店に放火したとされる事件があった。
 当然、放火は占拠していた赤組関係者と看做され、捜査、容疑者の逮捕等が行われて
 来ているが、これに人騒がせなタクシン氏が異を唱え、
 ”真犯人は他にいる、赤組関係者では無い。真犯人の情報提供者には、
 一人当たり1,000万バーツの賞金を出す”と海外より伝えて来た。
 何事にも、金、金、金の手法に、多くの人々の冷笑も買っている。
 
 永年に亘って、タクシン氏のスキャンダルを追及し続けて来た62歳の実業家が、
 同氏の運転手に殺害された。

 この24歳の若者は殺人を自供し、遺体を遺棄した場所を伝え、
 そこで遺体が発見された為、彼の個人的な恨みか、金欲しさによる犯行と断定され、
 さらに彼の自宅より、同氏と共に消えた500万バーツも見つかったため、
 当局をこれにて一件落着としようとしたが、これに地元のメディアが、
 怨恨、金以外の背景があるのではないか、警察や有力政治家の関与もあるのでは
 ないかとの疑念の報道を続けている。
 タイでは金権家の某氏が命じそうな事であり、人々の注目を集めている。
 
 日本では、参院戦の前哨戦と位置づけ、鳴り物入りで都議選が行われた。
 人々が安倍政権をどう評価しているのか等、大変興味を持ってTV報道を見たが、
 何と有権者の内、半数以下しか投票しなかった事が報道された。
 
 海外より見ていると、今、日本は大きな曲がり角にいる。
 アベノミクスにも疑問符が点滅している。
 株価が少し上がったぐらいで浮かれている状態では無いと思うのだが、
 東京都の有権者は一体何を考えているのであろうか。
 大切な時期にこの権利放棄、何たる日本の惨状かと思わされた。
 タイ人よりも信じられない数字と冷笑を買っている。
 これでは組織票を持つ党が勝利するに決まっている。
 東京都でこの有様、参院選の投票率が危惧される。