M&A月報 No.184 始耕祭と、らしくないインラック発言


 
 
 
肺炎で安静にされていたプミポン国王陛下のご病状が回復されたと
 発表された。医師団は公務の一時的な見合わせを助言され、5日の
 63回目の即位記念の式典には、皇太子殿下が代わりに出席された。
 国王陛下のX線検査を実施したところ、炎症の緩和が確認、陛下は
 よく眠れているが、食欲は回復されておらず、抗生物質の投与を
 継続されておられるとのこと。国民一同がご健康を案じ、ご快復を念じている。


 
 
 毎年紹介している始耕祭であるが、今年も皇太子殿下ご出席の下、
 執り行われた儀式では、広場の中に特設された畑で、祭主を先頭に
 2頭の雄牛が「黄金のすき」を引き、女性らが種をまく。
 その後、牛にはコメ、酒、草、豆、トウモロコシなど7種類のえさが与えられる。
 今年は、牛はトウモロコシと草を選び、「穀物や果物など食べ物と
 降雨量が多いだろう」と予言された。また、長さの違う種類の反物の
 中から1枚を選んで天候を占う儀式でも、降雨量の多さが予想され、
 「高地での稲作には十分な水量だが、低地の農地はダメージを受ける
 かも知れない」との占いが示された。
 
 ただ、現実は、2011年の未曾有の洪水問題より一転して、干ばつ被害に
 直面しており、試算によると経済損失は約200億バーツとも報じられている。
 洪水対策だけではなく、干ばつ対策も急務であり、インラック首相は人工降雨、
 地下水掘削等で水源確保を指示している。水の問題は常にタイにつきまとい、
 そして悩ます。

 インラック首相は、
 “タイは選挙で正当に選ばれたタクシン元首相をクーデターで追放して以降、
 民主主義から脱線した。クーデターはタイの法律を破壊し、国際的な信用も
 失わせた。タイ国民は権利と自由が不当に奪われたと感じた。
 また、2010年のタクシン派大規模デモでは自由を求めた罪なき人々が狙撃手に
 殺され、多くの政治的犠牲者が取り締まられ今なお身柄拘束されている”
 と今まで触れることのなかった内容に言及し、国内で批判が噴出し、すぐさま
 王党派は「タイの春」を起こして政権を打倒すると猛批判、急速に政治情勢が
 不安定化に陥った。

 首相はすぐさま、
 “タイの国際的な信用を高めるのが狙いだった。あらゆる国が民主主義の
 強化に手を携えていけるよう呼び掛けるつもりだった。また、将来のクーデターを
 防止するもので、タクシン氏の犯罪をなきものにするつもりはない“
 との釈明に追われたが、らしくないスピーチで一気に早期の解散総選挙説が
 浮上する事態となった。

 赤組も黙ってはいない。
 3年前の治安部隊による5月騒乱の赤組強制排除「ラチャプラソン53」作戦から
 3年を迎えた19日、昨年、一昨年に続き、かつて占拠した交差点で3万規模の
 集会を開き、犠牲者追悼や当時のアピシット政権に対する糾弾を行ったが、
 インラック政権に対する不信感も募らした。
 
 チャルーム副首相は、2006年クーデター以降、政治活動で罪に問われた
 活動家に恩赦を与える独自の内容の法案を国会に提出したが、同法案は
 タクシン氏やタクシン派団体の幹部も対象としている。
 しかしながら、赤組は、恩赦対象を一般の活動家に限定した法案を
 支持しているため、副首相案を、タクシン氏の帰国実現と引き換えに
 強制排除の責任追及を放棄する取引だ、と感情的にもとても受け入れがたい
 内容と声を高めている。

 クーデター後の政治犯に恩赦を与える法案含め、「タクシン氏の帰国実現」に
 向けた種々の動きが今後のタイの行く末を二分すると言っても過言ではないほど、
 くすぶり続ける根深い火種が未だタイには存在する。

 当タクシン氏本人は、
 “チャンスがあれば帰国する。帰国できなくても何も、そしてどんなポジションも
 望まない。タイ社会に民主主義をもたらす様、引き続き努力する。恩赦法案に
 付いては、デモ指導者や自分自身より2010年の反政府デモに関連し
 身柄拘束された人々を対象としなければならない。
 国会議員は恩赦法の審議を進め、政府は支持者のケアを続けるべきだ。そして
 インラック首相にこのまま国を率いてもらう”
 と述べているが、タクシン一族内では、決して表面化することのないそれぞれの
 役割分担があるらしく、それは、タクシン氏が国内外の政治、妹のヤオワパー氏が
 党内外の調整役、そしてインラック首相は、タクシン、ヤオワパー両氏が書いた
 台本に従い、リーダーを演じることだという。タクシン一族の3本の矢が、タイを
 牛耳る構造は、引き続き、当分続きそうな気配である。

 
 タイ投資促進委員会(BOI)は「新投資奨励戦略」を2015年1月に導入するとした
 スケジュールを承認した。当初は今年半ばよりと言われていたので、実質1年半の
 先送りである。新制度では投資奨励の対象を下記10グループに絞り込む方針である。
 (1) 基礎インフラ・物流
 (2) 基礎産業
 (3) 医療用具・科学機器
 (4) 再生可能エネルギー・環境
 (5) 工業部門を支援するサービス業
 (6) 基礎技術開発
 (7) 食品・農産品加工
 (8) 保健・医療サービス
 (9) 自動車関係
 (10)電気・電子

 また、遠隔地の工場立地に手厚い恩典を付与してきた「ゾーン制」を廃止し、
 関連業種を集積した「産業クラスター」を推進していく。投資恩典も、
 「ベーシック・インセンティブ」と、国にとって利益となる投資計画の促進に向け
 追加的に付与する「メリットベースド・インセンティブ」の2本柱となる。
 付加価値の低い産業や、環境負荷の大きい産業は恩典と対象外となる。

 2015年のアセアン共同体に向け、ようやく高度技術・付加価値をもった企業
 及び事業の積極誘致、奨励付与に具体的に舵を切り始めた。
 タイ中小企業の海外投資促進の政策も具現化する中、“タイへ進出”から、
 “タイが進出”へとも時代は変わりつつある。