M&A月報 No.175号 「日本の今、タイの今、アセアンの今」

 

先の皇太子殿下の時にも嬉しく感じたが、今般、国王、妃殿下、王女様が、
お元気なお姿で船に乗り、バンコク郊外の水害被災地をご訪問される様子が
テレビで報道された。

皇太子殿下と3時間にも及ぶ夕食会、今回も長時間のご乗船でもお疲れの
ご様子も無く、国民のご長寿を願う叫びに、笑顔でお答えと成り、健康面での
不安を払拭された事を大変嬉しく感じている。
 
しかしこの後に計画された、中部地方へのご訪問は、脳にわずかな出血が見つかり、
延期された。痙攣と心拍数の上昇との事であるが、ご疲労が募ったのではないかと
心配している。国民一同と共に、国王の早期ご回復をお祈りしたい。
 
タイには多くの裁判所があるが、その一つに、日本では聞きなれない
憲法裁判所というのがある。
 
通常は検察の申し立てにより開かれるものであるが、今回は野党の、
”与党によるある期間の政治犯を全て無罪とする、憲法改正は違憲である”
との申し立てにより開催された。
 
もしこれが明確な違憲と判断されると、与党タイ貢献党の解体にも繋がる判決となる為、
人々の注目を集めた。
 
8名の裁判官により、4つのポイントが審議された。
 
(1) タイ国民は、憲法改正案が民主主義政治を打倒するものだと思われた場合は
   最高検察庁に調査を求め、憲法裁に申し立てを行う事が出来る。
 
(2) 国会は憲法改正を実施する権限を有する。
   しかしそれに先立ち国民投票によって承認されなければならない。
 
(3) 今回の改正案に付いては、民主主義政治を打倒する狙いがあると判断する
   十分な証拠が無かった。
 
(4) 従って、憲法裁は政党の解体や役員の政治活動禁止処分に付いては判断はしない。

 
この結果、タクシン氏他を無罪とする改正案はほぼ可能性が無くなり、
またタイ貢献党も解党は免れた為、黄 VS 赤の対立も解消し、
混乱はいったんは収束する見込みとなった。
 
今回の判決で特筆すべき事は、憲法改正にはまず国民投票が必要という点を
明確に打ち出した所にある。

また政体打倒の疑義がある時は、国民が直接憲法裁に申し立て出来るとした為、
タクシン関連の改正が出された場合は、その都度、反対派より申し立てが行われる事が
想定され、決定には長時間を必要とする事が容易に予測される事態となった。

違憲との判断は為されなかったものの、手続きに誤りがあったの判断を示した事で、
タクシン氏帰国問題は先延ばしとなり、市民グループ間での衝突も回避され、
これ以上の混乱を回避して欲しい事を願う我々としては、
ほっと一息を付く玉虫色の裁きであった。
 
今後、親タクシン派の与党国会議員は、各条例ごとの変更を行い、タクシン氏の
一日も早い帰国を実現すべく、動き出すものと思う。
また海外に亡命中のタクシン氏は、今回の憲法裁の判決には不満の意を表明した。
 
今般、2015年に統合を目指す、ASEAN共同体の外相がカンボジアに集合した。
特に議題に上がったのが、この所、急速に南シナ海での露骨な権益拡大を目指す
中国を牽制する決議案を採択しようとしたが、カンボジアが、領有権問題は
二国間で解決するもので、声明文にそれを記載する事に強行に反対、
話し合ったのだから記録に残すべきとするフィリピン、ベトナムと険悪な雰囲気となった。
 
ミャンマーは、
”ASEANは我が国に変われと言って来た。
そして我が国はASEANの利益に適う行動を行った。
今、何故各国は妥協出来ないのか”
と呆れ顔で発言した。
 
今回各国の足並みが乱れ、その結束に多いなる不安を残す会議となってしまった。

シンガポール、マレーシアには、ASEANを引っ張るリーダーが引退した為弱体化し、
タイも有力候補であったタクシン氏が国外に追放されて居り、強力なリーダー不在を
印象づける残念な出来事であった。
 
インドネシアのマルテェ外相は、
”こんな事はこれまでは無かった事で、無責任にもほどがある、ひどく失望した”
と記者会見で述べたが、統合まで残り3年、不安を感じさせる会合であった。
 
ASEANよりは、以前より、この様な事態も想定して、日本の積極的介入と、
そのリーダーシップに期待したいと、ラブコールを送り続けて来たが、
昨今の日本の政治家の様子を眺めていると、これまた望み薄と感じている。
 
2015年にASEANを統合させる事は、日本に取っても大変有益な事と
思っているだけに、残念な様相を呈してしまった。
また日本はアセアンを手中に収める絶好機を逃している様にも感じている。
 
4月より引き上げられた最低賃金であるが、その後、5,000件を越える苦情が
労働局に提出されている事が伝えられた。
労働局がこの問題に対処しない事に付いても苦情が殺到している。
 
約半数は、未だに賃金が上げられていないとするもので、次に多いのが、
賃金は上げられたが、逆に福利厚生費が削減されたり、
労働条件が悪化したというものである。
 
勤務年数の長い従業員よりは、最低賃金の上昇に併せ、自分達も昇給させろとの
要求が出されているが、経営者は、これを逆手に取って、これ等高齢者を解雇し、
若い低賃金の人材を採用するケースが増加した事に不満が募っている。
 
最低賃金引き上げは、労働者の家計を改善し、労働者を幸せにする事を
目論んだものであるが、実際にどれだけの労働者が幸せになったか、
疑問を呈する状況に成っている。
 
スー・チー旋風が一段落したと見たのか、ミャンマーの大統領、
テイン・セイン氏が初のタイ公式訪問を行った。
インラック首相が付きっきりで、お持てなしを行い、いかにミャンマーとの
関係を重視しているかのPRを行った。
 
大統領に付いては、今までのいかにも軍部の大将とのイメージよりは
大きくかけ離れた、通常のエリート官僚との印象を持った。

両首脳は、両国が経済協力を深めて行く事が、両国の関係を緊密化させ、
ひいては、両国の経済発展に大きく寄与するとの認識で合意した。
ダウエー工業団地の開発、人材教育の支援、エネルギー開発、港湾の充実、
道路網の整備等で今後協力関係が構築されて行く事になった。

大いに結構な事と思うが、またタクシン一派の企業の独占的な関与となり、
一部企業のみの収益に直結せぬ事を念じている。