M&A月報 No.175号 「日本の今、タイの今、アセアンの今」

 

例年の通り、40日間のお休みを頂き、神戸で日本の春を満喫した。
しかし昔と違って、何か雰囲気が重苦しい。
頻繁に地震の情報も伝わって来るが、今回は歴史的な竜巻の被害が報道された。
これも世界を取り巻く異常気象の副産物かとも感じている。

面白くないのはTVと新聞だ。
読んだり、見る所がほとんど無い。
高速バスの事故、人が刺された、原発の再稼動、問責決議を可決された大臣、
消費税増税案、野田・小沢等々、有識者と称する面々が延々と
これ等問題に付き語って下さる。

その間にも、日本で人を雇用し、税金を払ってくれる大切な企業群は、
黙って、どんどんとアセアン等の海外への進出を決め、移行している。
世界では、今、日本が最も注目し、教材とすべきと考えるギリシャ問題が、
連日大きく取り上げられているが、日本はギリシャ以上に深刻な状況というのが、
マスコミには理解されていない様な気がする。
 
ギリシャは破綻すると、まずは欧州全体を巻き込んで仕舞う。
しかし、日本の問題は、日本だけの問題である点が、世界から見ると大きく違う点と思う。
即ち、日本がずっこけても、世界は余り影響を受けない故、表面化しないのだと思う。
 
政府より頼りにされているのは、我々の虎の子の預金であろう。
今やる事は、人気取りの子供手当て等のバラマキは即止め、
国家公務員への支出は半分にし、特別が付く、政府関連機関は全廃する等の対応で、
とにかく歳出を40兆円に近づける事と感じている。
 
消費税を10%にしても、焼け石に水、90兆円もの歳出計画を削減する事こそが、
首相が政治生命を掛ける事と思うが、如何であろうか。
TVや新聞で、面白く感じ、見る気になるのは、橋下市長が出た時のみであった。
国民を引っ張っていく、重要なマスコミ、何か方向が間違っていませんかと、
問いたくなった。
  
今朝も有難い事に、タイへのご進出の件で、中小企業の方々がお越しになっている。
夜には、地銀様主催で、日本より進出を考えておられる方々を
お招きした懇親会が開催され、明日はこの方々への投資セミナーが、
弊社もパネリストとなって開催される。

我々には、大変ありがたく、嬉しい事象ではあるが、こんな状態で、
我が祖国は安泰なのかと危惧の念を抱いている。
 
月末には民自公による談合の政治劇場が演じられ消費増税が一歩前に進み、
首相は決められる政治と胸を張った。
首相は、”待ったなし“”政治生命を賭ける”“心からお願い”でこの増税を進めたが、
増税が何故歳出削減より重要で、先行せねばならないのかの説明が無く、
マスコミもこの点をなぜもっと取り上げぬのか理解に苦しんでいる。
ギリシャを見てもEUが強く求めているのは、歳出の削減ではないか。

これでは、悪天候、地震、津波、放射能、節電、電気代アップ、円高、
それに今度は増税等に悩む企業の海外進出がまた加速するのではと心配している。
  
ミャンマーのスー・チー議員が、東アジアの経済フォーラム参加を主にタイを訪問した。
堂々たる貫禄にタイの関係者一同は圧倒された感を受ける。
そのフォーラムでは、
“今日自分がここに来たのは、皆さんから、ミャンマーに何をして欲しいかを
聞きに来たのではなく、皆さんにミャンマーは何をして欲しいかを伝えに来た。
ミャンマーの最大の懸案事項は、学歴不足の多くの若者の就職難である。
これを解決する為に、教育プログラムの作成、導入をお願いしたい。
収賄に加担する様な企業進出は望んでいない“
と述べた。
 
南部のミャンマー労働者が多数来ている地域も訪問し、人々を激励、
彼等が如何に望郷の念に駆られながら、外貨獲得のために必死に働いているのが
分かった。彼等が早く祖国に戻れる様に努力すると演説した。
 
次々にタイの要人との会談も報じられているが、風刺マンガでは、
彼女ばかりがスポットライトに照らされ、彼女ばかりが大きく取り上げられる現状に、
インラック首相が
“どうして???彼女は私より年長だし、アイシャドーも付けていないのよ???”
と掲載された。
 
当地でも、彼女夫妻の映画“THE LADY”が話題となり、多くのタイ人知識層がDVDで、
彼女の過去を勉強した。
日本にも政治生命を賭ける政治家が居るが、20年以上にわたり、
真に生命を賭けて戦って来た人物との差を痛切に感じさせる、彼女の訪タイであった。
 
 
新聞報道によると、皇太子殿下が初のタイ公式訪問をされた。
いつもは入院生活をしておられる国王陛下が、妃殿下と共に、
宮殿における非公式な夕食会に、皇太子殿下をお招きされた。

国王のお元気そうなお姿を拝見し、嬉しく感じると共に、日本に対する感謝の
気持ち等を感じ、日―タイ間の絆の強さを感じさせるありがたい行事であった。
 
 
望郷の念に駆られているタクシン氏を何とか無事に帰国させようと、
与党は”国民和解法案“を国会に提出しようとしている。

この法案は2005年9月~2011年5月の間に発生した全ての政治に関する
罪を免除しようとするものである。
この法案が通過すると、現在服役中の赤組、黄組の政治犯も釈放される訳であるが、
タクシン氏を無事に帰国させようとする意図が見え見えのものである。
 
これに対し、黄組は法案の審議入りに強く反発、1,000人以上が参加するデモを行ったり、
議会を占領し審議を不能に陥れたりの強攻策に乗り出した。
一方、過去に判決を下した憲法裁判所は、これは司法に対する政治の不当な介入として、
審議停止を命じた。

これに対し、政府与党の要人よりは、立法権は司法権に従属しないとか、
憲法裁判所の命令自体が憲法違反であるとか、裁判官は弾劾の訴追を受けると発言しているが、
裁判官は憲法216条に
“憲法裁の採決は絶対的で、国会、内閣、裁判所、その他機関を拘束する効力を有する”
の条文を持ち出し、これ等の抗議を一蹴している。
インラック首相をだんまりを決め込んでおり、今後の彼女の動向に注目が集まっている。
 
 
2007年にタクシン政党に違法行為があったとして、党が解党され、111人の有力国会議員が
5年間の政治活動を禁止された。
それが、今般解禁となった為、彼等の去就に注目が集まっている。
内60人は早速タイ貢献党に入党したが、インラック首相の動きは、予想に反し緩慢で、
今の所、大物が要職に起用される動きは無い。
 
注目のタクシン氏が訪日した。昨年8月以来の追放後、二度目の事である。
今回は、アセアン統合を取り纏め、自分が主役の座に座る事をPRに行くのかと思っていたが、
あまり突っ込んだ議論は無かったようで、現在の日-タイ間の自由貿易協定が
あまり進捗していない事に言及するに留めたようであるが、ミャンマー、タイ、カンボジア、
ベトナムを結ぶ幹線道路のプロジェクトに日本の技術、金を投入する事を
今後は画策するのではないかと感じている。
 
最高のセールスマンの肩書き通り、絶えず金の成る木を探し歩く彼の罠に
日本は加担せぬ事を念じている。