M&A月報 No.167号 「インラック政権誕生とタクシン氏の企み活発化!?」   


選挙管理委員会は今回の総選挙の当選者500名を正式に承認した。

それを受け、国王の名代として皇太子殿下が国会を召集、併せ2名の上院、下院議長も任命された。

これに続き、国会が開催され、遂にタイ初の、

しかも世界で最も若い女性首相インラック首相(44歳)が誕生した。 


就任にあたっての記者会見では、国民の融和、協調を最大の課題として上げ、

初の女性首相になる事については、”挑戦であり、女性の優しさ、人々の意見を良く聞く特性を生かして、

全国民が幸せになる事に全力を尽くす”と抱負を述べた。

しばしはお手並み拝見の状態になると思う。

 

早速、インラック政権の組閣が行われたが、驚きや、目玉になる閣僚はいなかった様に感じている。

注目の財務大臣であるが、民間人の元中銀、証券取引所のトップが起用された。

諸外国と渡り合った経験の無い点が懸念材料として囁かれているが、

誰がなっても最も困難な任務になると思っている。

選挙協力をして、かなりの票を集めた赤組の処遇に注目が集まっていたが、世論の反発を恐れたのか、

兄タクシン氏の指示か、赤組よりの閣僚への登用は無かった。

今後の赤組の反応に注目してみたい。 


35人の新閣僚を前に国王が訓示を行われた。

“まずは国の平和に全力を尽くす事。閣僚は自分の過去の発言に責任を持ち、それを守り、且つ正直に、

国の為に職務を遂行せよ。今、我が国は国を引っ張って行ってくれるリーダーを必要としている。

もし諸君が自分に与えられた職務を全うしてくれれば、国の将来は明るく、皆が幸せになるであろう。

今世界を見渡すと平和が保たれていない。タイは率先してその範を示して欲しい“


今後の最大の焦点は兄タクシン氏の恩赦案件になると思う。

強引に恩赦を進めると、司法との対立、彼を追放した軍部との協調にひびが入り、

帰国に強く反対している黄組との再度の摩擦等、

国を二分する論争を再度呼び起こす事が問題となってくると思われる。 


このタクシン氏の件であるが、2008年、国外追放された後、

日本訪問を行ったが、その折、日本政府は首相はもとより、

どの大臣も面会せず、外務省担当官が応対し、彼に花束を贈呈した。

この処遇に彼は激昂し、廊下に花束を叩きつけて離日した経緯がある。

その折、彼の復権があり得る事を述べたが、今回、妹が首相になると、早々と訪日の話が話題に上がった。

日本政府は先回の非礼を反省したのか、二年の禁固刑が確定している同氏に、

早々と入国の許可を出す処置に出たように感じられるが、一方、タクシン氏は、これの実現後に、

次々と主要各国に働き掛け、外交での実績を作り、恩赦による帰国の実現を目指したい考えのようにも受け取れる。


当地の有識者は、彼はとにかく1~2日間は監獄に入り、その後、裁判のやり直しを要求、

そして無罪を勝ち取る事になるのでは、と見ている。

1~2日間でも、どうしても収監されたく無い彼がどの様な手を打つのかにも注目して見たい。

珍しく当地の新聞は、今回の日本の対応に大いに注目しており、皮肉を込めて“日本は特別な法処置を取り、

タクシン氏にビザを交付”と一面で大々的に取り上げた。

新聞情報ではドイツ政府も彼の訪問を受け入れる意向のようであるが、彼の再登場を読み切れなかった、

当時の日本外務省の分析力に大きな疑問を感じると共に、

何とも節操の無いお粗末な外交姿勢と思うが如何なものであろうか。

当地の新聞では、彼の訪日が報道され、自見大臣が面談した事が報じられたが、

何故自見大臣であったのかには疑問符が付いている。

一方、インラック新首相は今回の彼の訪問には何も拘わっていない事を強調、

日本政府に働き掛けたとされる外相は野党より厳しくその違法性を追及され、

自分も関与していないと答弁、また一部一般大衆は、日本大使館前に押しかけ、

入国の取り消しを要求するデモも行った。

タクシン氏本人は、妹もタイ政府も今回は誰も日本政府には働き掛けてはいないと、

あくまで日本政府独自の判断である事を強調した。

アセアンの盟主になる野望、願望を抱くタクシン氏、それには日本の後押し、支援が必要、且つ今後、

アセアン諸国を訪歴するには日本訪問の実績が必要、一方、日本は何故特別な法的処置を取ってまで

彼の入国を歓迎する判断になったのか、反タクシン派よりは疑問を提起されている。

彼の復権を全く予測出来なかった前回の非礼のお詫びであるとすれば、

何ともお粗末な対応と言われても致し方ない所業と思う。


次なる懸案事項は、最低賃金を300バーツに引き上げる件で、産業界からは企業の倒産、インフレの懸念等々、

猛反発の声が上がっている。

選挙戦の目玉であっただけに、簡単に取り下げる訳にも行かず、新政権の悩ましい問題になると思っている。 


インラック首相が施政方針演説を国会で行った。

1. 国民所得の向上を行い、内需主導で経済の持続型成長を目指す。

2. 一年以内に最低賃金を300バーツに上げ、大卒公務員の初任給も

8,700から15,000バーツに引き上げる。

3. 企業の負担軽減の為、法人税を30%から20%に引き下げる。

4. 農家向けには米を高く買い入れる価格保証を実施する。


要旨は以上の通りであるが、大幅な最低賃金の上昇は企業の国際競争力を阻害し、且つインフレ率が高騰し、

内需拡大に繋がらない、また企業の損益が悪化した中での法人税の引き下げは効果が無いとの批判も出ている。


全く政治経験の無いインラック首相の口癖は、“所定の手続きを踏まえて進めて行きます”“

関係者、関係機関より回答させます”“詳細に付いては存じて居りません”と揶揄されているが、

愈々国会での質疑応答も始まり、今後どの様に答弁していくのかに注目が集まると同時に、彼女を取り巻く閣僚は、

彼女の失言を防ぐために、かなりの精力を注がざるを得ない状況にあると思っている。 


2008年、株式譲渡時に脱税行為があったとして、タクシン氏の元夫人ポチャマン氏は3年の

禁固刑の判決を受けていたが、これを不服として高等裁に控訴していたが、

今般、一審判決を破棄し逆転無罪の判決が下された。

今後のタクシン一族の司法関連を占う意味で大いに注目を集めていたが、やはり義理の妹が首相になれば、

司法判断も逆転するのかの思いを人々に与えている。 


面白い風刺マンガが新聞に出たので紹介します。

“野田首相は5年間で6人目の首相”

インラック氏の似顔絵:それが何よ?私だって5年間で6人目の首相よ。

野田氏の似顔絵:しかし日本は軍によるクーデターは無かったよ!!

インラック氏の後ろに隠れているタクシン氏の似顔絵:

インラックは実際には私のクーロンだ。したがって、事実上の首相とは勘定すべきでは無く、タイは5年間で5人だ。 

 

前月、ドイツ企業によって、ミュンヘン空港に到着している、皇太子殿下の飛行機が差し押さえらた件を報告したが、

タイ政府は大慌てでドイツ側と交渉、保証金を政府が支払い、皇太子殿下の飛行機は無事開放された。

世界には奇抜な手を考える人がいるものだと感じさせる出来事であった。

且つ、風説ではこの保証金はタクシン氏が払ったとの説もあり、奥深い事もあり得るのかと感じている。