M&A月報 No.161号 「赤組戦闘要員逮捕と洪水大被害」


10月に入って早々、シリキット王妃殿下入院のニュースが舞い込んできた。
病状は不整脈とのことであるが幸い大事に至らず、4日ほどでご退院、
プミポン国王陛下が入院されておられるシリラート病院に移動された。
12月には恒例の国王陛下の御誕生日祝賀式典がある。
御二人のお元気なお姿を拝見することを国民はいつも念じている。
 
国王陛下が入院されておられる病院に爆弾を仕掛けるとの脅迫電話を
した男が逮捕された。常日頃、政治情勢に不満を募らせていたことによる
犯行で単なるいたずらと供述しているようだが、
いたずらで片付けられるほど簡単な事件ではない。
この男は赤組派で先の反政府活動にも加わっていたとのこと。
禁固刑1年と罰金1,000バーツの罰則は軽すぎると思うし、
今後、このような模倣犯が増えるのではないかと憂慮している。
 
5月騒乱後、地方、特にタイ国南部におけるテロ活動に向けた
各種訓練が秘密裏に行われていることが危惧されていたが、
今回、北部チェンマイにおいて、赤組の戦闘要員11名が逮捕された。
 
取り調べで、彼らを含む総勢39名がカンボジア・シェムリアップの軍事基地で
武装訓練及び王室失墜を目論む洗脳を受けていたことが明らかになった。
 
当該11名は5月騒乱時の赤組集会の参加者である。解散後、方々に
散らばったが、集結の誘いを受け3グループを形成。
国境検問所を通過せずにカンボジア領内に侵入し、軍基地にて武器の
使用方法や実弾や本物の爆弾等を使用した訓練を受けた後、
2万バーツを支給され、35名がタイに入国。
 
逮捕された11名はチェンマイに向かい、その他の24名は各々の
グループに別れ、目下、バンコク、チョンブリ、サラブリ県などに潜伏中、
残りの4名は、騒乱後、逃走を続ける赤組幹部のボディガードとして
引き続き、カンボジア領内で活動を続けているようである。
 
テロ行為や要人暗殺、王室失墜等を狙った武装訓練の実施であったが、
バンコクで発生している一連の連続爆発事件への関与、タイ誇り党の
党首ネウィン氏やステープ副首相を標的とした暗殺を企てるなどの疑いの他に、
5月騒乱時に過激実行部隊として目撃されていた黒組(黒服)との情報もある。
これら不穏な動きの背後にいるとされる赤組幹部は計6名とされる。
 
バンコクと周辺3県の非常事態宣言が解除されない憂慮すべき状況が続いている。
今後のさらなる捜査進展と真相究明に期待したい。


そのネウィン氏であるが、自身の暗殺計画疑惑に付き、
「様々な脅迫があったことは事実である。首謀者は国外にいる私とは
政治的スタンスが異なる御仁であり、かつての私のボスである。
このような行為に走る前にまずは国家を愛し、そして国家の正常化に
向け尽力していくべきだ」
と暗にタクシン氏を思わせる発言をし物議を醸している。
 
タクシン氏の顧問弁護士は同氏の発言を受け、
「タクシン氏は“お互いを許す慈愛の心を持って国内和解推進に取り組もう
ではないか。血の弾圧は本年5月19日、クーデターは2006年9月19日で
終わったのだ”という声明を出している。彼はもはや誰に対しても復讐心など
抱いていないのだ」
と述べると共に名誉毀損で告訴する意向を示した。
元師弟関係の根深い遺恨の争いが再熱しそうな様相である。
 
そのタクシン氏であるが、あるサイトが発表した“最悪な指導者”の
ワースト5位に入ってしまった。
 
不正や人権侵害で非難に晒されていた最中にクーデターにより失脚。
各国から不正に入手したパスポートをもって海外を転々としながら
国内の赤組を扇動。今年5月には90名以上の死者を出す騒乱に発展。
国を混乱に落とし入れ、大きな損害、国民不安をもたらし、国家分断を
より深いものにした当事者である、と指摘された。
 
同氏は、次回の総選挙に向け、逃亡先から積極的に政治活動を展開、
タクシン派の貢献党に様々な角度から尽力する意向のようである。
来年中には総選挙が行われる。
タクシン派勝利によるタクシン復権もあり得ない話ではない。
この頃多くを語らない同氏であるが、今後の動向が益々注目される。
 
アピシット首相は、タクシン氏と袂を分かったネウィン氏率いる
タイ誇り党が連立政権に対し不快感を募らせていることに対し、
「窮屈と感じるならいつでも出て行ってもらっても一向に構わない。
排除してもいい。このような状態で共に働くことは共に不幸である」
 
と述べ、同党を突き放す姿勢に出た。
同党の報道官兼政府副報道官に対しても
 
「君は一連のニュースの情報源なのか?それとも副報道官なのか?」
 
と冗談交じりに詰め寄るなど、益々同党への態度、発言が厳しくなっているが、
そこには「連立からの離脱はない」との確信があるためであろう。
 
しかしながら、連立離脱云々以前に、最大与党民主党の解党訴訟問題が
あることを忘れてはならない。
2005年に選管から割り当てられた政党開発資金2,900万バーツの
不正使用で選管が憲法裁へ直接提訴したもので、18日首相と同党幹部が
出廷、証言を行った。
 
11月末にも判決が下される予定であるが、もし解党処分、幹部の5年間の
公民権停止が命じられた場合、連立及び内閣は崩壊となるが、首相は
この時期における内閣改造・連立見直しを否定、厳しい態度をとる
誇り党(ネウィン派)の連立維持も強調した。
一方、赤組派の貢献党内では次期首相指名を狙って様々な思惑と動きが
あるようである。
 
もしタクシン派政権が誕生した場合、国家分断はさらに深まり、混迷を極め、
今度は黄色組の活動が活発になることは必至であろう。
ゆっくりと自分の人生を謳歌する微笑みの国のタイ人が幸せに暮らす
タイ王国本来の姿に戻る日は一体いつになるのであろうか?
 
その貢献党が、民主党下院議員と憲法裁の裁判長秘書官の協議の
隠し撮り映像を公開した上で「解党案件絡みの働きかけという容認できない
司法介入を行った」と指摘、また、憲法裁と民主党による監視カメラシステム等
発注に絡む癒着疑惑、憲法裁内の一部判事の不正行為など、
衝撃的な内容に付き、解党裁判判決が近づくこの時期に明らかにした。
当然の如く、民主党、憲法裁、共に猛反発、猛否定。
同秘書官と貢献党によるでっち上げとした上で共に調査委員会を設置、
調査に乗り出した。貢献党は「真相は闇の中に葬らされる」、
民主党は「司法介入、働きかけを行う必要は全く無い」、
憲法裁は同秘書官を解任した。
タイらしい政治的攻防戦が繰り広げられているが、一方、世論はどうか?
 
民主党支持者は約半数、司法への信頼度に影響が生じると回答した者も
約半数、解党判決に対しては過半数が
 
“政策遂行中断もしくはリセット”
“国内情勢激化”。
 
首相提唱の国家改革に対しては
“国家改革に関する十分な知識を持ち合わせていない”
“国民は一致団結せず、個人利益のみ追求し対立は深まる一方”
“依然として政治など信用できぬ”
とした上で改革断念、不成功との見解を示し、
 
国家改革よりも
1. 教育制度改革
2. 経済・雇用改革
3. 国民の健康改革
4. 文民意識改革
5. 社会福祉制度改革
6. 政治改革及び公正
等の実現を希望している。
 
司法に対しては“恣意的な判断が入らない公正判決を望む”であった。
先般、プミポン国王陛下は新任裁判官への訓示で
 
「勇気を持って、任期の最終日まで手際よく法律に則って職を全うせよ。
あなた方は自己の義務を厳正な中立を保って、且つ公正並びに現実を
直視し遂行せよ。
 
大切な事は、あなた方の判断が中立で正しい事である。
もしこの事を守れば、あなた方は職務を全うした事になる。
 
もし守られなければ、祖国を敵の手に渡したと同等の事になる。
そして集中非難を浴び、醜い姿を晒す事になろう。
 
正しく、公平に判断を下していれば、それは職務を全うしている事である。
正しい判断を勇気を持って決断せよ。
勇気を持たねば、その判断は無視されるものとなろう。
 
国の価値を高め、平和を継承する為、死する日まで職務を
全うする覚悟で臨みなさい」
 
と述べられている。
民主党解党裁判に付き、公明正大な判決が下されることを望むばかりである。
 
昨年同様、連日の大雨による問題が、特に地方で深刻となっている。
国王陛下も大変憂慮されておられる。
 
29日時点で、洪水による死者は94名、被災地域34県、被災者約100万世帯、
被害を受けた農地5,000平方km、生産休止工場約350件、被害国道約240路線の
全長約760km、被害学校数25県約700校という甚大な被害である。
政府は補修等に充てる緊急予算を次々に計上、一時金給付や
関連税免除などの支援策を打ち出した。
このような素早い政府対応がある中で、赤組と黄色組は独自に洪水被害の
救援活動、支援に取り組んだ。
そこまでは好意的に見つつ、お互いが協力することを期待したが、結果的に
両者競い合いに終始し、共に手を取り合うことはなかった。
各々、次回総選挙を睨んだ支持獲得の思惑があるようで、試行錯誤、
様々な手を使って支持者を増やそうと躍起のようである。
 
チャオプラヤー川の水位が上昇し、河川敷では土のうを積むなどの対策を講じている。
今後の上流ダムの放流による水位上昇と潮位の高い大潮の時期が重なる
ことからさらなる警戒を強めている。
 
1996年の9月にもチャオプラヤー川が氾濫し、深刻な被害が出たが、
その時国王陛下が政府に対し、洪水対策を早急に行う様、異例とも言える
アドバイスをされておられる。
その時の教訓が今この時活かされるのか、政府主導による
今後の継続的な対策・対応に注目したい。