M&A月報 No.157号 「赤組騒動一時沈静化、バンコク平穏な街並みへ」
 
4月は例年の通り、休暇を取り、日本の桜、筍を楽しみ、5月に戻ろうとしたが、
バンコクでは騒動が更に激しくなり、今戻る事は得策では無いとの現地情報が入り、
結局、5月25日の帰タイとなった。
 
我がアパートは軍隊が封鎖した地域の真ん中に位置し、焼き打ちにあった
デパートよりは約400m、銃撃戦が行われた公園よりは約800mの位置にあり、
前の小道は簡易トイレ、ドラム缶を使った風呂、屋台、散髪屋、マッサージ屋に
占拠され、アパートの出入りは妨げられ、大変な異臭に包まれていたと聞いた。

しかし、5月22~24日、多くの関係者、ボランティアの市民により、大々的な
清掃が行われ、25日には全く元の姿で異臭も無く、人々は何事も無かった
ように動いている、これには驚かされた。
タイ人とは、働かない、いい加減、無責任、道徳観念が無い等々のコメントを
良く聞くが、今回の素早い対応、情報ネットワーク、人々の協力等を見ると、
感動、感謝の気持ちを大きく持つ。
これがやる時はやるタイ人の底力であろうか。
今回の様な事が仮に東京で起こったら、我々がかくも見事に清掃出来たで
あろうかと思わせる特筆すべき事象であった。
いつも話題にする、塀一つで隣接しているゴルフ場も、さすがに道路封鎖された
期間は誰もプレイ出来なかった由であるが、25日は既に優雅な層のタイ人で
満員の盛況を呈していた。
 
残念、乍ら国を二分している今回の騒動、これで万事円満解決とはなって
いないと考える。
基本問題となっている総選挙、今行えば赤組勝利と予測する人が多いのが
事実と思う。
だから現政権は怖くて選挙に踏み切れないのである。
軍隊、警察の内部も半分は赤組と思うべきである。
だから数多くの兵器、弾薬、タイヤ等が封鎖されているにも拘わらず持ち
込まれたのである。
強制排除に時間が掛かり過ぎてしまったのも、この点が大いに関連していた
と考察している。
 
膨大な量の弾薬が押収されたが、これは仕掛けに対する技術の未熟さにより、
残っていたものと解説するタイ人もいる。
この反省より、特に南部に於いて、今後爆破技術の教育が施される事が
憂慮されるとも言う。
今後のテロ対策が重要という事であろうか。
 
今回の焼き討ち、強奪を考察すると、親赤組の経営者の所は、例え隣接して
いても全くの無傷、親黄組が狙い打ちされた事が如実に判る。
 
デパート、ショッピングセンター、ホテル、銀行等被害にあった所、無傷の所、
明確に差が出ている。
バンコクに居住している方々はこの点良く理解が出来ると思うが、観光客には
見分けが付かぬ点、今後の心配点と思っている。
人が多く集まる所でも、行っても安全な所と危険な所がある事を分析し、
情報を流すべきと思う。
 
幸いな事に、赤/黄とも、外国人は味方に付けたいのだ。
特に、日系企業、日本人に見限られたらタイは御終いという事は十分認識している。
日の丸の付いたTシャツでも着て、街の中を歩きたい心境である。
 
いつも思う事であるが、日本大使館は渡航自粛、外出自粛等、後追いで警告を
出してくれるが、状況分析情報は無いのであろうか。
今後どうなると見ているのかを含め、もっと具体的なお達しが欲しい様に
思うのだが如何なものであろうか。
そう思っていると、日経のコラムに“予算で劣るインテリジェンス後進国、日本の
どことなく頼りなげな風景である”と記述されていた。
世界各国と比し、予算が十分配分されていないのであれば、これは声を
大にして叫ぶべきではなかろうか。
 
日本もそうだが、貧困に喘ぐ、農村の一票も一票。
アピシット首相はもっと農村支援策をぶち上げてはどうかと聞いてみたが、
 
”彼のようなタイ人エリート社会育ちの人間には無理なんだ。
彼は農村に行かないんだ。行っても受け入れてもらえず、農民と会話が出来ないんだ。
信じられない事だが、就任して一年、未だに農村部訪問を実現した事実が無いんだ”
 
と言う(実現させて貰えないと言うべきかも知れぬが)

これでは目を覚まさせたタクシン氏に勝つことは至難の技といわなければならない。
国を二分している騒動、残念ながら当分終わりそうに無い。
黄組が経営している場所には近づかない事が肝要なようである。
 
アピシット首相は今回の騒動を静める為、国民和解の為の工程表に取り組む事を
表明し、国家再建委員会を設立すると発表した。
その委員長に長老で元首相(1992年)、未だに最も首相になって欲しい方で
No.1の位置を占めるアナン氏を起用した。
非常に好ましく思うし、好感を持ってこの人事を受け止めているが、日本には果たして、
この様な御仁が存在するのかと危惧する一方、タイもいつまでも80歳の御仁に
助けを求めなければならない現実を憂慮している。
そのアナン氏だが、
“途上国では憎しみ合う現象が最も危険な事である。
お互いの憎悪をとにかく静めないと次の段階には行けない。
憎悪と怒りと汚染された温度を下げる事からまず作業を開始すべき“
とコメントされた。
同氏の手腕と積極的な介入に期待したい。
 
出来上がっている様に見えるのに、中々営業を開始しなかった、空港と市内を
結ぶ高速鉄道であるが、遂に営業を開始した。
当分の間は、日に数時間の運行とするが、無料で提供、正式開通は
8月23日の見通しが発表された。
空港―市内、15分間は魅力だが、市内の駅で降りてからの、インフラが
懸念されている。
手ぶらで身軽な人には向いているが、大きなトランクを持った人々はどうなるのかが
心配されている。
 
中国、韓国の首脳との会談の為、鳩山首相が韓国に飛び立つ映像を見たが、
驚く事に、令夫人を同伴されての旅立ち、大変な違和感を感じていたら、
帰国早々に首相を辞任、既にこの時には首相としての最後の旅行、修学旅行と
覚悟をされていたのかと思いもした。
重箱の隅を突きまくるような、または人の懐に手を突っ込んで財布の中味を
探るような日本のマスコミの対応にも違和感を感じている。
我が国、日本の安全は如何に対応して行くのかを議論して、民意を問うのは分かるが、
普天間と母よりの支援金で首相が辞任とは、世界では余り例を見ない次元の
低い辞任劇と感じている。
自国の防衛は如何にするかの大議論を聞きたいものである。
社民党は、米軍は国外へ、憲法第9条は固守というが、では我が国を如何に
守るのかと誰も、又どのマスコミも質問しない事に首をかしげている。
上記のアナン元首相が、数年前に
“アセアン各国はそのリーダーとして日本が力を発揮してくれる事に絶大な
関心がある。
有事の時に米国民が日本国民の為に血を流すとは思い難い。
米国の関心は石油である。
日本は何故戦後に米国より押し付けられた憲法を改正しないのか。
自己防衛力を強化すべきである。
有事の折に最も日本を援護出来るのはアセアン諸国である事を認識して欲しい”
とコメントした事を再度思い出している。
 
何時も思う事であるが、タイの政局は日本と似ている。
首相こそ継続されているアピシット政権であるが、連立の和が乱れた。
今回の騒動の責任を追及され、野党より首相や5閣僚に付き不信任案が出されたが、
結果否決されたものの、連立より賛成票が2閣僚に投じられた。
これを受け、首相は8閣僚の入れ替えを決断、連立には新たに一党を加えた。
首相は、政権を固め仕事を継続する為と説明、今後総選挙の実施に向けた
工程表に取り組むと理解を求めた。

大臣のポストを餌に、数合わせに奔走する姿は何処も類似と見ている。
しかし嬉しい事に、この認証式に国王が背広姿で元気なお姿をお見せ下さった。
彼等には
”正直に誠心誠意仕事に取り組み、もし誰かが自分達の行方に立ちふさがる
のであれば、正面より取り組め”
と興味のあるコメントを為された。
 
日本では長期に亘る低温の日々を体験したが、当地バンコクでは連日かなりの
雨量となっているのに、東北部の農村地帯では、降雨が無く、旱魃の被害が
拡大しており、農家が悲鳴を上げている。
この影響はバンコクにも及びそうで、飲み水不足懸念のニュースが人々を
不安な心境にさせている。
世界の異常気候は中々治まりそうでは無く、農産物の高騰が当地でも話題と
なっている。
日本を見習い、アピシット首相は、これ等旱魃被害の農家へ支援金をばら撒き、
人気取り政策に走り出している。
来年の総選挙に向けて、日本の民主党に負けない、農村部へのばら撒き政策が
発表されそうである。
 
そのアピシット首相であるが、今回行われた世論調査では、忠実さ、誠実さは
大いに評価されているが、一方意思決定力が弱いとの評価を下された。
評価されている省庁は教育、財務、観光スポーツと出た。
日本でもこの省庁に対する世論調査を実施してみたら面白いのではないかと
感じている。
 
日本ではいよいよ参議院選、これから大使館に行き、一票を投じてみたい。