M&A月報No.52 「同時多発テロ事件とタイ政府の対応」

 

“THE DAY THE WORLD CHANGED”もうもうと煙を上げるマンハッタンの写真と共にセンセーショナルな見出しをThe Economistは表紙に採用した。

米国で起きたテロ事件は世界中の視聴者をTVの前に釘付けにした。まるで映画を見て居る様であり、現実に起こっているとは信じられぬ出来事であった。

21世紀は世界の経済が沈滞ムードの中で幕開けしたが、今回の事件は、更に世界経済を冷え込ませるのではないかと心配されて居る。同じ見出しでも、良い方向に変る事を期待して居ただけに残念な出来事であった。

タイ政府も敏速に動き出した。
即ち、中央銀行並びに金融機関に金融資本市場の監視強化を命令、12日は史上初めて株式取引市場をCLOSE,又、石油輸出の停止を指示等の手を打ち、国民には“影響は深刻では無い”と人々が動揺せぬ様呼びかけた。

当然テロ対策にも手を付け出し、テロの一味がタイに潜伏して居るとのニュースもあり、当局の諜報活動強化の命令が出た。BKK市内でもイスラム系の人々が集まる地域があるが、彼等にとっては住み難い21世紀の始まりに成ったものと思う。

他の諸国と同様、株価の下落、観光客が30%減等、実際に影響が出て来て居り、現在までの輸出の延び率マイナス6%で喘いでいる製造工場等を含め、今後の経済の更なる減速が懸念される所である。

一般市民は金の価格が急騰すると判断し、投機目的での金の購入に走り、平常時の10倍の売上に成ったと報じられている。

タクシン首相は石油価格の高騰を懸念し、ガソリンスタンドの深夜営業の中止、一部地域での街灯使用の中止、広告並びにビルの照明中止、午前0時以降のテレビ放映中止、ビジネスマンの上着着用を不要としエアコンは25~26度に設定する等の省エネ対策を打ち出し、具体化に向かって検討に入った。

タクシン政権は発足して6ヶ月が経過した。
農民の債務返済猶予、農村基金の創設、資産管理会社の創設、診察料30バーツの導入、麻薬追放等の公約を次々に実現している事を現政府はPRし、野党よりも公約違反の声は上がらなかったものの、憲法裁判所のタクシン首相に対する不透明な無罪判決、議会軽視、景気回復が実感出来ぬ事等もあり、今後の6ヶ月間が注目される所である。

若者への覚せい剤の蔓延は風俗営業が夜明けまで営業している事が影響しているとして、深夜営業は午前2時迄とする法律の遵守強化に政府は乗り出した。

現在は地域の警察にワイロを贈り、目こぼしをして貰っているが、内相はそこの署長を左遷する等強硬手段に出て来た。又、バンコックにおける風俗営業は3~4地区のみに限って認める等の方針を発表した為、業界は大混乱に陥った。

風俗店の経営者、TAXI関連企業等より、それでは観光客が激減する等の再考を求める訴えが出たが、一方で内相の強い言動に賛意を表する人々も少なからず、今後の成り行きが注目される所である。

指定される地域も発表された為、その地域の地価が3倍にも急騰する現象が表れている。一方、これから風俗営業を考えて居る経営者は、場所の再検討等を迫られる、頭を抱える事態と成った。

国王はエビの養殖に興味をお持ちで、自己のプロジェクトとして、塩水汚染問題を解決する技術開発に取り組んでおられ、テスト段階では問題解決のレベル迄来たと仄聞していた。

一方、3年前より禁止に成って居る内陸において、外貨獲得の為、解禁の動きが出て来た。所が、この動きを知った国王は関係者を呼びつけ“可也距離のある内陸で、エビの養殖は賛成出来ない”と明確に反対の意を表明された。

この出来事は、如何に国王は稲作を重要と思って居られるかの表れであり、儲けに走る近隣諸国と比較して、国王の毅然たる態度表明に評価は高まっている。

日本での狂牛病の発覚によりタイも輸入禁止措置を取った。当分美味しい牛肉は口に入らぬ事に成りそうである。