M&A月報No.48 「タクシン首相の独断専行と中国・朱首相の訪タイ」

 

待望の雨季に入り、降雨後は涼しく成り、果物も豊富に、安価に、美味しく成って来た。

日本よりは連日小泉内閣の動向を伝えて来るが、当地も新政権樹立後3ヶ月が経過し、タクシン首相も負けづ劣らづの活動を展開している。一方、タクシン首相の独断専行の言動も目立ちはじめている。

BOIの企業誘致の現状は、“世界の奴隷になる”様なやり方であり、安価な且つ良質の労働力のみを売りものにしている。輸入資材の為、多額の外貨が流失している。地場部品の調達率UPや輸入削減が必要と述べ、現BOI幹部の政策を強く批判し、人事の刷新も計る事を表明。

タイは未だに経済危機より抜け出して居らず、公務員が長期の休日を取る事は特に教育、経済、商業に悪影響が出る事が懸念される為、4日間が限度と定めた。

国営の不良債権買取機関であるタイ資産管理会社(TAMC)が6月中旬より業務を開始する。
スキームは以下の通り。

1.不良債権を、貸し倒れ引当金を除く簿価(NBV)で買い取る。
2.残高が500万バーツ以上で債権者が複数である事。
3.原資はTAMC発行の社債とし、政府が保証する。
4.処理は5~10年で行い、将来の損失は金融機関が最大30%、TAMCが最大70%負担する。
5.買取総額は1兆3,500億バーツで、国営銀行より1兆1,000億バーツ、民間銀行より2,500億バーツ負担する。

プーケット、チェンマイを買い物天国にする件は、密輸入問題が激化する等の理由により廃止され、その代わりに全国に免税店を増設する方向とした。

IT事業促進の為、“I-Bureau”なる局を新設し、各省庁間のコミニケーションのみならず、1村1品運動の為、7,200の村を1年以内にインターネットで結ぶ計画を発表。

タイ中央銀行(BOT)は97年の金融危機以来、不良債権に苦しむ銀行の収益力回復の為、且つ幅広い経済の回復を目指す為、低金利政策を取って来た。一方、資本流失を止めたいタクシン首相は高金利政策を主張。

政治に影響されないBOTの独立性を主張するチャトモンコン総裁と一触即発の状況と成った。目下進行中の首相の資産隠し疑惑では“クロ”の判決が出る可能性が大と言われて居り、これを“シロ”にする為には、“景気回復はタクシンでなければ出来ない”との世論を形成する必要がある。又、国際社会に強いバーツのイメージを発信したいとするタクシン首相。

然るに、25日タクシン首相の批判する低金利政策の内容をE-Mailで世界の投資家やアナリストにBOTが発信した為、海外より数多くの質問が首相府に殺到した。

これに激怒したタクシン首相は、遂に閣議においてチャトモンコン総裁の更送を決議し、輸出入銀行の総裁のプリディヤトーン氏を新総裁に任命した。新総裁は“急激なバーツの変動は、万人に好ましからず”との見解を発表した。

タクシン首相は証券取引所(SET)の理事長も現BOI長官のサタポーン氏に入替える見込みで有る。

一方、タクシン首相の資産隠し疑惑に付いては、此れまで審議を長引かせる様な戦術を取って来た様に見受けられるが、ここに来て、一変、証人を出廷させず、証言を文書で提出する作戦に出て来た。これにより判決が6月末もしくは7月上旬に出る見通しと成った。

この背景は、長期化した場合、現政権のイメージが下がる事を恐れ、寧ろ支持率の高い間に決着し、仮に有罪と成った場合は5年間(首相の周辺は事件が起きたのは97年であるから、それより5年とすると残りは2年間のみと見ている。)公職より追放されるが、その間は院政を敷こうとの意図と見られて居る。

有識者の間よりは、彼の様に多くの資産を有する者が、意図的にでは無く、斯かる僅かな資産の公表を抜かる可能性は十分に起こり得ると、同情のコメントも出て来て居る。

中国の朱首相がタイを訪問した。
米国の対中政策が強硬に成って来た事に対応すべく、国境を接しておらず、直接的に安全保障の問題が無く、親米派ではあるが反中派でも無いタイに対し急接近してきたものと思われている。

一方、当地には華僑勢力があり、これらの中には根強い郷愁の念があり、又中国を巨大なマーケットと見て魅力を感じている。

中国に取って、タイは自由国陣営でありながら友好関係を築ける国であり、タイに期待する所大なるものがあるのであろう。

朱首相は多くの農産物の輸入や、麻薬対策の為の国際会議を中国で開く事を合意する等多くの手土産を持参した。中国へのタイの接近を懸念し、米国は異例とも思えるタクシン首相を米国に招待する旨のメッセージを発信した。

過去にその外交の上手さにより植民地化を避けて通って来たタイであるが、今又、米中の冷戦構造の中で様々な有利な条件を引き出そうとしている。
日本も見習う必要があると感じる、外交上手である。