M&A月報No.134 「アナン元首相講演要旨と閣僚辞任相次ぐ」

 

首相の座とはそれ程快適なものなのであろうか。
与党は、一軍の監督並びにそのプレイヤーが退場を命じられ、二軍の監督
並びにそのプレイヤーが昇格し、一軍として登場して来た。

元の監督の指示通りに動くと表明していたのに、次第に自己流で戦おうと
元監督との間に距離を置く様になる。
しかし、実力不足は如何ともしがたく戦績は不調。
ファンよりはブーイングの嵐。
コーチ陣が悪いとし、その入れ替えでこの場を凌ごうとする監督。

一方、野党の他球団は、1992年、国王より退場を命じられた化石のコーチ
を起用。昔ながらの戦術の只政権を非難するのみ、何でも反対、挙句には
デモ、座り込み戦術で交通渋滞を加速するのみ。
これではファンは増えない。

野党軍にも立派な若手リーダーがいると思うのに、何故か、自分が首相に
なれば斯様な政策を実行すると表明せぬ。
つまり政策で争うとする姿が両軍の間に全く見えない。
只首相の不信任を提出するのみで、落胆せざるを得ない。

「国の難局、何故貴方の様な素晴らしき人材が立候補し、立ち向かわぬのか」
と、多数のエリートに質問してみる。

首相になれば、マスコミが寄って集って、ある事無い事、個人財産の細部
まで種々書かれる。家族はたまったものでは無い。
プライバシイーが全く無くなる。
特に、ファースト・レディーとなる奥様の反対が強い。
従って、これはと思う人の後押しはするが、立候補はしない。
これが目下のタイの現状であろうか。
困った事である。
しかし、待てよ、これに似た状況が何処かの国にもある様に感じた。

3大長老の一人として人々の尊敬を集めている、アナン元首相が
“民主主義の標柱”というタイトルで講演を行った。

ここに要旨を紹介したい。


民主主義の構造には7つの柱があると考えている。

1.選挙

一般市民の声を反映しているのであれば、一人でも少数グループであっても、
自由で公平な選挙に打って出る事を妨げてはならない。
民主主義においては、政党を発足させる事が出来、個人的な感情の入らない
キャンペーンを打つ事が出来る。
全ての政党はメディアに自由に接触でき、自分達の政策を公表出来る。
第三者機関によって、公平な選挙が行われる様な監視体制が必要である。
しかし選挙は策略により票の買取が行われる事がある。
立候補者より、その支持者の力により票が集まる事が多い。
これは正当な市民の声を選挙に反映する事を阻害する何ものでも無い。


2.政治の寛容

与党となっても、野党となった人々に圧制を加えたり、横に押しやる様な
権限を与えた訳では無い。
多数を得たからといって、少数派の自由や権利、資産、生命を奪えるものでは無い。
民主主義には、政治に寛容が不可欠である。
少数派が何の権限も与えられないのであれば、そこに平和は存在しない。
寛容がなければ、見せ掛けの民主主義であり、嘲りの対象となろう。
ある国においては、少数派に投票した人々には食料の供給、水の配分、
資源発掘等々で差別待遇を与える事を武器に、選挙を有利に展開させようと
する所がある。


3.法律のルール

法のルールと民主主義の間には密接な関係がある。
政府が何らかの政治的動きを見せた時、人々はそれが合法的であるか否か
確認出来る。
政府のポリシーに反対する人に対し、政府は法に基づいてか、それとも自由裁量
によってか、何れにせよ正当な手続きを行わずに逮捕する事は出来るのであろうか?
官僚政治に陥ると民主主義は機能障害を起こす。
裁判所、立法府、民間団体、警察、軍隊等は自分達を裕福にする為にその権力を
行使しようとする。
一般市民社会の負担により自分達のやりたい事を押し進め様とする。
法は無視され、汚職が法律のルールを傷つける。
法のルールを確かなものにする為には、司法の独立性と誠実さが守られ、違法な
調停等に影響されてはならない。


4.表現の自由

人々は政治に付き、自由に発言し、それを印刷し、配布し、討論する事が出来る。
自由な表現は自由社会の尺度である。
現在においてはインターネットの普及が自由な意思表示に大きく貢献している。
民主主義が定着した国でも、往々にして、政府はメディアを自分達に有利な方向
に向かわせようとする。
しかしインターネットの世界では、政府のコントロールは難しくなっており、
自由闊達な意見があふれ出る事を制御出来なくなっている。
正当に選挙で選ばれた政権であっても、TV、新聞、インターネット等のメディアを
コントロールしようとする。
もしこれら表現の自由が空洞化すれば、民主主義は妥協の産物となろう。


5.責任と透明性

政府や関連の役所の人々は、自分達の行動に責任を持たねばならない。
政府は自分達を選んでくれた人々に責任を感じなければならない。
また司法やその他役所は、政府の行う事に対しチェック機能を持たなければならない。
物事の決定は、一部グループの思惑で決定されるものでは無く、国民の願う方向で
決定されなければ成らない。
責任と透明性は一部の人達の利益の為に事が運ばれる事を抑制する機能がある。
これが無視された時は、民主主義が危険領域に入った事になる。


6.地方分権

人々に近い所で政治を行おうとする政府は、当然の事として地方に権限を委譲する
事になろう。
中央集権を排除するという事は、予算、物資、人的資源、役所の機能等に付いて
地方に権限を委譲する事である。
人々は自分の身近な所で行われる行政に接し、興味を持ち、積極的に議論に
参加しようとする様になり、自分の隣人が行う事に親しみを感じ、民主主義に参加の
意義を感じる様になる。


7.市民社会

市民社会の活動は草の根運動である。
民主主義を定着させる為には、有能なリーダーの出現が必要である。
正直で、透明性があり、責任感のある人がリーダーが選ばれなければならない。
心を広く持ち、公平な行政を行うことが重要である。
そして人々の期待に答える動きをせねばならぬ。
また反対の意見者にも寛容であれねばならない。
よく民主主義とはやっかいな問題を孕んでおり、人々の関係に傷を入れるという
意見もある。
この様な意見がある事も事実である。
しかし我々は過去の間違いを二度と犯さないように、また新しい世代のリーダーが
真の民主主義国家が築ける様に、その道を切り開いて行かなければならない。


アナン氏が言いたい事は、票の買収工作により与党となり、憲法を変えてまで
野党を押さえ込もうとし、官僚政治となり、司法が上手く機能せず、TVや新聞等の
メディアを支配下に置き、密室の中で物事を決め、中央集権化を強化しようとして
いるPPP党、並びにそれを率いるサマック首相、背後に見え隠れするタクシン氏、
これ等を批判し、若き次世代のリーダーの出現を鼓舞し、その人を支持、支援して
行く事を表明したものと感じた。

前回の12月の総選挙の折に、金で票を買った嫌疑を掛けられていた、
与党PPP党の副党首の要職にあるYOUNGYUTH氏に最高裁は有罪の判決を下した。
同氏は今後5年間の政治活動を禁止される事になる。

タイとカンボジアの国境近辺にプレアビヒア寺院があり、両国が領有権を巡り
争っていたが、1962年、国際司法裁判所がカンボジア領の判決を下していた
(但し、入り口はタイ側)。
今般カンボジアが世界遺産に登録し認められた。

これを支持する書簡をタイ外相が交付していた事が発覚、野党より、本件はタイでは
未解決と認識されているのに、支持した文書を議会の承認を得ずして出状した事は
憲法違反であり、重大事件として取り上げ、ノパドン外相の罷免手続きを開始した。

同氏はタクシン氏の顧問弁護士で、当初より外相の器として疑問を持たれていたが、
結局、混乱回避の為、辞任した。

野党はタクシン氏がカンボジアで展開しようとしている事業を有利に運ばせる為、
外相はサインしたと主張、問題は更に複雑化している。

チャイヤ保健相が、夫人が5%以上の株を保有している会社があるのに、これを
報告してなかったとして、憲法裁判所は同相の大臣職を剥奪した。

ワタナ元副内務相が汚水処理場の工事に際し汚職の嫌疑があり、裁判となって
いたが、今般この裁判に出廷しなかった同氏に逮捕状を出した。

西松建設の某氏が外為法違反容疑で東京の検察で聴取を受け、2003年に
バンコク市のトンネル工事の受注に際し、当局者に4億円の賄賂を提供したと
供述した事が当地で大問題となっている。
何故なら、当時のバンコク市長が今の首相サマック氏であるからである。

国王の訓示を受けた為か、タクシン/サマックの影響力の低下か、裁判所、
判事が積極的に動き出した。
大臣の辞任等も重なり、サマック政権崩壊は時間の問題となって来た感がする。
最悪、また総選挙になりそうである。

拉致問題を日本のTVや新聞で見ていると苛々して来る。
米国他諸国の思いも同じでは無いかと思うのだが、何故もっと自力での解決に
努力しないのだと言いたくなる。

通常は
”自分はこんなに努力をしたし、これからはこういう事をしようと考えている。
しかしこういう反応に合い、ここが困っている。ここを後押しして欲しい”
と言うべきではなかろうか。

ブッシュ大統領も子供に泣きつかれて、しょうがないから“見捨てはしない”との
発言をした様に感じたが、本心は如何なものなのであろうか。
この一言を貰ったからもう安心と思っているのであろうか。
ブッシュ政権の任期も後残り少ない。
北朝鮮でこの体たらくであれば、日本が中国とぶつかった時どうなるのか
不安を禁じえない。
頼りになるASEANとの関係構築を再度叫びたい。

日本と同様、タイの物価上昇も急で、6月のインフレ率が遂に過去10年間で
最高の8.9%を記録した。
弊社の様な零細企業でも、月給15,000バーツ以下の従業員に付いては、
今年中500バーツ/月の特別生計手当を支給する事を決めざるを得ない様な
状況になっている。

大型中古車の売れ行きが急減した事も報じられている。
レストランにおいても、家族ずれの客層が遠のいたとの報告もある。
景気の減速に財布の紐が締まる状況にある。
政府は経済の刺激策として、法人税の引き下げ、更には石油高騰により
増収となる間接税の戻しを検討し出した。
この石油税の戻しは当然と思うが、日本よりは何も聞こえて来ないのは
何故であろうか。

洞爺湖サミットが無事終了、関係者の皆様にはご苦労様と言いたいが、
当地タイの新聞には立派な料亭でのG8の首脳並びに奥様方の写真と共に
下記の記事が大きく出た。

“彼等は食べて、食べてまた食べた”

“世界、特にアフリカでの食料不足の危機、並びに価格の高騰を論議した後、
彼等25人の料理人が作った8コース、19皿の夕食を平らげた。
これに先立つ、昼食は牛肉をメインとする4コースであった。
また5種類のワイン他の酒類も出た。

食事の中には、キャビア等高価な食材が彼等の納税者のお蔭で有り余る
ほど出された。この連中では食料危機の打開策は無理であろう。“

この費用は各国の割り勘であったのであろうか。
サミットは1,000億円掛かったとの声も聞くが、一体総額いくら掛かった
のであろうか。